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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第十二話 Me262 V1
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うべく機体は整備班に引き渡された。予想以上の性能に興奮を隠せないのはバルクホルンだけではなかったようで、普段は冷静なミーナでさえ心なしか浮ついているようにさえ見えたほどだった。

「さっそくデータをまとめてくれ、ミーナ。明日もテストを行うぞ。これが実用化されれば、カールスラント奪還も夢じゃない。沖田にも感謝しなければならないな」
「そうね。今回の試験でも予想を上回る結果が出ているわ。この調子でいきましょう」

 格納庫に機体を運び入れると、皆口々にジェットストライカーの凄さを褒め称えながら去って行った。その横顔は期待に満ち溢れ、試作機に対する期待と意欲を容易に感じさせるものだった。
 しかし、その陰で暗い顔をしている人間が一人だけいた。

(ダメだ……これ以上、このユニットに大尉を乗せちゃいけない……)

 まるで恐ろしい怪物を見るかのような表情で、和音は誰もいなくなった格納庫でMe262を見つめていた。この時点で、Me262の欠陥と危険性に気付けていたのは、おそらく和音ただ一人だっただろう。

「このユニットは、危険すぎる……!!」

 深刻な面持ちでそう呟いた和音は、足取りも重く自室へと引き上げていった。





 ――ロマーニャ基地 食堂

「にしても、まさかわたしのマーリンエンジンが負けるとはなぁ……」

 夕食のシチューを口に運びながら、シャーリーは悔しそうにぼやいた。
 言うまでもない。午前中のテストの事についてである。
 現行のあらゆるストライカーユニットと比較して、特に抜きんでた性能を持つ機体がP-51だ。航続距離、武装、上昇力、加速性能、最高速度、旋回性能……どれをとっても一級品であるそれを、シャーリーはさらに改造して性能を底上げしている。それを易々と下して見せたのだ。受けた衝撃は推して知るべきであろう。

「うむ、まさかカールスラントの技術力があれほどとはな」
「ウルスラも大変だったって言ってたよ?」
「そうね。まだ開発が始まったばかりだから……でも、これで大きく開発に弾みがついたわね。今後も試験を重ねて詳細なデータを本国に提出するようにしましょう」

 食卓での話題も専らジェットストライカーの事だった。
 しかし、その中でただ一人、深刻な面持ちを崩さないのが和音だった。

「あれ、どうしたの和音ちゃん。ご飯、口に合わなかった?」
「いえ、そうではないんです。宮藤さん」

 今日の配膳も宮藤とリーネが担当してくれている。口に合わないはずがない。
 
「珍しいですわね。体の具合でも悪いのかしら?」
「そういうわけでも……ないんです」

 果たして言うべきか、言わないでおくべきか……
 和音は迷っていた。これほどまでに大きく期待を寄せている機体の危険性を
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