第百三十一話 二人の律儀者その一
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第百三十一話 二人の律儀者
信長が朝倉討伐の兵を出したとの話はすぐに天下に知れ渡った、安芸でその話を聞いた元就はすぐにこう言った。
「朝倉は負けるな」
「勝てませぬか、やはり」
「織田家には」
「頭を下げていればよかったのじゃ」
こう三人の息子達に話す、これが元就の見立てだった。
「別に頭を下げても面子は守られるのだからな」
「右大臣殿はそうしたことは守るからですな」
「恥をかかせることはないからですか」
「朝倉はただ面子を気にしているだけじゃ」
元就は義景には一度も会ったことがない、だが伝え聞く限りで彼のことを知っているのでこう言ったのである。
「それではその面子を傷付けなければよい」
「右大臣殿はそうしましたが」
「それをですか」
「あの御仁はわかりませんでしたか」
「誇りは必要じゃが過ぎては天狗になってしまう」
元就はこのこともよくわかっていた、これまで見てきたものからわかっているのだ。
「朝倉がそれじゃ」
「織田家より格上と思ってですか」
「それで、ですな」
「そうじゃ」
まさにその通りだというのだ。
「今でもそう思っておる」
「しかし織田殿は今や七百六十万石、十九万の兵を持つ天下随一の家です」
「そして右大臣にもなられています」
「最早格上とかそういうことを言える相手ではないですが」
「我等から見ればそうじゃ」
そうなるというのだ、他の家の者から見れば。
「しかし朝倉から見ればどうか」
「同じ斯波氏の家臣であり直臣だったあの家と神主上がりの織田家ですか」
「それだけで格が全く違う」
「そういうことでありますか」
「そうじゃ、朝倉家だけが思うことじゃ」
もっと言えば美影がである。
「我等では感じられぬことじゃ」
「その朝倉殿だけが思うからですか」
「あの御仁は織田家に頭を下げなかったのですか」
「そうなのですか」
「そういうことじゃ。もっとも朝倉は織田家との力の差もどれだけかよくわかっておらぬやも知れぬがな」
越前八十万石と織田家の七百六十万石の差もだというのだ。
「宗滴殿が何とかしてくれると思っておるな」
「十九万の織田家相手にですか」
「それが出来ると」
「思っておる、確かに宗滴殿は三十倍の兵を破ったこともある」
それだけのことはしたことがあるというのだ。
「しかし今度の相手はまた違う」
「一向一揆と織田軍ではですか」
「また違いますか」
「織田家の軍勢は確かに個々は弱い」
天下一の弱兵とまで呼ばれているのは変わっていない。
「しかし鉄砲もあれば長槍もある」
「しかも具足もよいですな」
「そうしたものが揃っております」
「侮れぬ力じゃ」
兵は弱いはそうしたことを考えていけばという
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