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八条学園怪異譚
第三十四話 眼鏡とヘッドホンその八

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「どうやらね」
「そうなんですか」
「いるみたいだけれど」
「先輩も見たことないんですか」
「座敷わらしで一緒に遊んだのは保育園のあの娘だけだから」
 だからだというのだ。
「男の子の座敷わらしは知らないわ」
「そうですか」
「そうなの、実はね」
 こう話すのだった。
「会ったこともないから」
「男の子の座敷わらしはですか」
「東北に行ったらいるかもね」
「座敷わらしの本場ですね」
「竜宮童子っていう似た様な妖怪がいてその子は男の子よ」
 この妖怪の名前がここで出た。
「この子もこの学園の中にいるわよ」
「いるんですか」
「何なら呼ぶわよ、いつも学園の中を適当に歩いてるけど呼べば来るわよ」
「あっ、今はいいです」 
 愛実は聖花にそれはいいと答えた。
「また次の機会に」
「そうなの、じゃあ今は呼ばないわね」
「それでお願いします」
「その竜宮童子って子も幸せを招くから」 
 だから座敷わらしに似ているというのだ、幸せを招き入れる妖怪という点において。
「こうした妖怪もいるのよ」
「妖怪っていっても色々ですね」
「幸せをくれる妖怪もいるんですね」
「うちの学園は適当にいる人とか驚かせる人とかが圧倒的に多いけれどね」
 前者も後者も多い、例えば口裂け女は驚かせる系だ。
「そうした子もいるのよ」
「ですね、そういうこともわかってきました」
「妖怪と一口に言っても」
「人間も色々だから」
 この場合は心ではなく身体的に、という意味での言葉だ。
「その辺りはね」
「そうなんですね、だから妖怪も」
「色々な人がいるんですね」
「そういうこと。それで話を戻してね」
 茉莉也はここでそうしてきた、その戻した話はというと。
「あの博士だったらね」
「座敷わらしを見られる様にしてくれますか」
「博士なら」
「出来るかも知れないわ」
 こう言うのだった。
「若しかしたらだけれど」
「じゃあ博士にお願いして」
「それで、ですね」
「私も行くからね」
 茉莉也も名乗り出る。
「博士のところには」
「先輩も、ですか」
「そうされるんですか」
 二人は茉莉也の名乗りには顔を曇らせた、そのうえでこう言うのだった。
「何もされないですよね」
「特にこれといって」
「何よ、私が最初から何かをするみたいじゃない」
「だって。先輩ですから」
 愛実が言う、曇った顔のままで。
「博士の研究室にはいつも妖怪さん達がいてお酒もあるんですよ」
「私とお酒なのね」
「はい、お酒が入って先輩って」
 問題はそこだった、茉莉也と酒の組み合わせが引き起こす化学反応めいたことを知っているから言うのである。
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