第九章
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の横のドアが開いた。背の高い白髪の老人と、人の良さそうな中年の男が入って来た。老人が口を開いた。
「あの様子だと、やはり飯島は香織襲撃には関わってはいないようだ。」
「ええ、それはないと思っていました。しかし、佐久間を早く見つけ出さないと何をするか分かりません。」
中年の男が口を挟んだ。どうやら、社長のようである。
「しかし、飯島を自分の仲間だと思わせて、佐久間に何の得があるんだろう。」
西野会長は、哀れむような視線を息子に向けて言った。
「飯島も言っていただろう。佐久間は、俺が向田のコネで裏の世界の奴らを使うと思ったんだ。もし、佐久間の言っていることが本当なら、俺は飯島を半殺しの目にあわせていた。しかし、何故、佐久間は飯島を恨んでいるんだろう?」
「さあ、分かりません。」
南がそう答えると、西野会長は深いため息をつき、イスに座り込んだ。そして呟くように言った。
「佐久間は狂っている。電話で話した時、そう感じた。狂人ほど怖いものはない。何としても佐久間を探し出さなければ、枕を高くして眠れない。」
「ええ、おっしゃる通りです。キチガイを野放しにはできません。」
「しかし、まさか香織を狙うとは思いもしなかった。南君、香織を大事にしてやってくれ。香織は傷ついている。今が大事な時だ。」
「ええ、分かっています。」
石倉が、センターに出勤してきたのは、それから一週間後のことである。リストラの影の責任者であることは、誰もが知っており、最初はおどおどとしていたが、次第に取り巻きが出来て、以前のふてぶてしい態度を取り戻していった。
飯島には取り巻き連中の気持ちがよく分かる。南も言っていたが、今回の石倉の処置は佐久間の要求を受け入れたもので、あくまでも一時的なものに過ぎない。南から斎藤副所長に連絡があったのだろう。斎藤が石倉にぺこぺこするのを見て、目端のきく人間は、南の意向を汲み取った。
皆、藁にもすがる思いで石倉に群がった。ここから抜け出せるチャンスをつかむためである。それを責めることなど誰も出来ない。生き残るためにプライドも連帯感も捨てる。そうして男は生きてきたのだ。
その連中の中に、佐々木の姿が見え隠れするようになった。佐々木が飯島家に再就職を懇願しにきたのは昨年の9月頃だった。それ以来優先的に2社ほど会社を紹介している。しかし、飯島にコネクションがあったにもかかわらず、佐々木は採用されなかった。
その佐々木は構内で行き会っても、飯島と視線を合わそうとはしない。考えてみれば、飯島が3月末に辞めることは既に知られており、彼の態度の変化も頷けなくはない。唯一の心の支えを失うことになるのだから、それを他に求めたに過ぎないのだ。
食堂で殊更大きな声で笑い合うグループに対し、憎しみの視線を向ける無言の中高年が取り巻くように座
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