第九章
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京支店では確実に実績を上げてきた。それが今じゃ赤字転落じゃねえか。」
「自惚れるのもいい加減にしろ。それはお前が抜けたから、そうなった訳じゃない。時代が悪いんだ。だから、今、組織を大改造して対処している。今の時代、組織力学を最大限に発揮することが出来なければ、組織そのものの存続が危ぶまれる。」
これを聞いて、飯島は呆れ果て鼻でせせら笑った。
「面白い冗談だ。組織力学が聞いてあきれるぜ。イエスマンを回りにはべらせていだけなのに、そうな難しい言葉を引用することはないだろう。」
「なにー、貴様、俺を馬鹿にするのか。いつだってお前は俺を馬鹿にしていた。分かっているんだ。」
南が激昂して立ち上がった。飯島も負けてはいない。
「馬鹿にされて当たり前だろう。アメリカかぶれもいい加減にしろよ。日本人は昔から外来文化をうまくアレンジして取り入れた。お前のやったことは、そのまんまじゃねえか。頭が足りないから馬鹿にされる。当たり前のことだ。」
これを聞いて、南はわなわなと震えだした。いきなり拳を机に叩き付けた。そしてどっかりと椅子に腰を落とした。飯島は興奮を押さえながら言った。
「そう、興奮するな。お前も相変わらず短気だな。何のために年を重ねたんだ。少しは大人になれよ。それから、もう一度、確認するが、佐久間は、見つからなかったんだな。」
南は未だ興奮冷めやらず、頬をぴくぴくとさせ苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「ああ、警官が部屋を訪ねるずっと前から、例の奴等が佐久間の草加のアパートを張っていた。しかし、そこには、とうとう戻って来なかった。それは事実だ。」
「分かった。それから、俺は、佐久間が女房を襲撃したと認めたことは警察に通報したが、この写真のことは警察には何も言ってない。奥さんのプライバシーは尊重せんといかんと思ってな。それに会長が手先に使っているヤバイ線の奴らのことも警察には秘密にしておこう。そのほうが、いいだろう。」
「ああ、そうしてくれ。」
互いの落とし所は、若い頃からの経験で分かっていた。これ以上相手を怒らせれば、後は殴り合うしかない。飯島は立ち上がりドアに向かったが、ふと、斎藤のことを思い出し、振り返ると口を開いた。
「そうそう、副所長の斎藤のことなんだが、今月末で辞令交付だったが、俺も3月末で辞める。センターの運営に斎藤は必要だろう。だから斎藤は勘弁してやったらどうだ。」
「ああ、いいだろう。それから、石倉がそっちにゆくことになった。佐久間の指示だ。いずれ戻すつもりだから、しばらくそっちで面倒みてくれ。」
「なるほど、そういう訳だ。佐久間の指示ってことか。成る程ね。石倉もおもわぬ災難を蒙ったわけだ。ざまみろって言いたいよ。まあ、せいぜい苛めてやるよ。」
こう言い残し、飯島は常務室を後にした。
飯島が退出すると、応接
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