第八章
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。いずれにせよ、西野ボンボン社長は営業に関して南にお任せですからね。ところで、石川とも言ってたんですけど、どうも陰謀臭くありません。飯島さんが、本社人事部の意向を拒否して、生え抜きの渡辺を支店部長に抜擢した。その直後、飯島さんが左遷された。そして、竹内はセンターを去り、破格の待遇だ。」
「ちょっと待てよ、竹内はただ去った訳じゃなくて、女性問題で失脚したんだ。俺を陥れるための布石っていう訳じゃない。俺の左遷と竹内の優遇とを関連付けるのは考え過ぎじゃないか?」
「まあ、その通りです。それがどうも分からないんですよ。竹内の失脚ではなく、名古屋支店長栄転でもよかったはずですからねえ。」
飯島は考え込んでしまった。人事部に逆らったからといって、わざわざ、そんな面倒な陰謀をめぐらせるだろうか。ややあって、臼井が言った。
「飯島さん。とにかく、今度、南が来たときには、アフターファイブを探ってみますよ。何かあるはずです。南が竹内と何か後暗いことやっているかもしれません。」
飯島は、臼井の秘密めいたウィンクに、思わず失笑してしまったが、
「とにかく、俺はこの会社を辞めるつもりだ。臼井さん、会長に直訴しろと言いたいのだろうけど、そんなこと期待しないでくれよ。」
と言って、サイドブレーキを下げ、車を出すよう促した。臼井はクラッチを入れながら尚も食い下がった。
「そんなこと言わないで下さいよ。社長は、と言うより会長は、今でも飯島さんを信頼していますって。南が飯島さんを陥れたのだって、それが原因ですよ。会長が返り咲いた時、いの一番に頼りにするのは飯島さんしかいませんから。」
飯島は、それには答えず、黙ったまま、所々明かり灯り始めた街並みを見つめた。既に、この会社に対する執着は一切なかったのである。
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