第5話「日常」
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「は?」
「より強い人間がこの場所を得られるというのなら、君たちよりもバレーが上手な俺がこの場所を得られるということだ。そして俺はこの娘たちにバレーを教えるところだった。だから君たちがどかなければならない」
それが君達のいう社会の厳しさだろう? とリーダーに向き直る。暫しの間ポカンとしていた彼女達だったが、すぐにほとんど全員が大声で笑い出した。ネギや2−Aの生徒達もオロオロしている。
なぜ彼女たちが笑っているかが分からないタケルが疑問を口にする。
「……何かおかしいことを言ったか?」
その質問に、むしろ馬鹿にされたと勘違いしたリーダーがキッと厳しい顔を見せた。
「ええ、おかしですわ! あなたが私達より上手? そんなわけがあるはずがありませんわ! だったらその証拠を見せていただきます」
言い終わるや否や、誰かが高くに放り投げたボールをリーダーが激しいアタックを打つ。ボールは凄まじい唸りを上げてタケルに向かう。そのボールを、タケルは身構えて、そして――
「!!」
次の瞬間、静寂に包まれた。
「これで、俺の勝ちだ」
少々自慢げに言うタケルに、アスナが言いづらそうに「あの、先生?」
「何だ?」
「ルール間違ってます」
「……何?」
その言葉はタケルにとって衝撃的なものだったらしい。タケルにが見事にキャッチしていたボールは、彼の手からこぼれ落ち、女子高校生たちはどっと笑い出した。
「あなた達の副担任は地味なだけでなく常識すら知らないの? お似合いね!」
と今度こそ本当に場所を独占しようと動き出す。もうそれに反抗する気力もないのか、それとも情けないタケルの姿にショックを受けたのか。2−Aの生徒たちも何も言わずに歩き出した。
「……待った」
「まだ何か?」
少し面倒くさくなったのだろう、苛立ちを見せ始めたリーダーに、タケルはだが臆面もなく言い放った。
「俺の攻撃は?」
「はい?」
「俺の攻撃が終わっていない。それを見せなければ俺の実力はわからない」
「……く」
屁理屈を、と何人かがいらだたしげに呟いた。2−Aの生徒達は既に期待の目をしておらす、むしろ心配そうな目をしている。
「いいわ、あなたのアタックを私が受けきれば大人しく出て行ってもらうわよ!?」
「ああ」
自身満々に答えたタケルが足元のボールを拾い上げ、ジッと見つめる。そして申し訳なさそうに「スマンが」と切り出した。
「何球か練習してもいいだろうか?」
「……いいわ、早くなさい」
もはや、苛立つのも疲れたのか、リーダーはため息をついて頷いた。
「助かる」
その言葉に、タケルは無表情だった顔を一変。愉快そうに笑った。その笑顔に、その場
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