第5話「日常」
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普段結構無愛想で言葉も短めなくせに言葉遣いは本人的に気になることらしい。
「フフ、本当に地味だこと。こんな先生が副担任だなんて、2−Aのお子ちゃまはともかく、ネギ先生が可哀想だわ!」
タケルの葛藤は彼女にとっては別段気にする必要のあることではなかったらしい。ズビシと効果音をつけたくなる程、見事な形で指をタケルの目の前に突きつける。
「ふざけんじゃ――」
アスナが我慢できずに話しに割って入ってきたところを目で止める。その目は優しい色を帯び、軽く微笑んでいるようにすら見える。
いつもは無表情で、4日間学校にいる中でも1,2度しか彼が表情を変えたところを見たことがないという。
そんな彼が優しい目をしている。それだけでアスナも含めた2−Aの女子生徒たちにとっては驚愕すべきニュースなのだ。
アスナも例に漏れず、愕然としてしまった。怒鳴ろうとしたその声は完全に止まり、続きを失った。
「……まぁ、それはいいとして」
「「いいの!?」」
なぜか今度は女子高生たちが反応した。
――もっと別の反応をすると思っていたのだろうか。
「君たちが無理やり場所を取ろうとしたって所は間違いないか?」
馬鹿にされた内容を無視して問題の根本を尋ねるタケルに「な」と、リーダーが驚きの声を短くあげる。
2−Aの生徒達がウンウンと頷く中、リーダーはニヤリと笑みを浮かべた。
「いえ、まさか!」
大仰に腕を振り、体をくねらせて芝居がかった口調で言葉を続ける。
「この世界は弱肉強食。だからこそ、彼女達よりバレーが強い私達がその場所を奪うことによって、その社会の実体と厳しさを教えてあげていたの」
「……」
――ええ〜〜!? え、何だ、この言い訳は。バカなのか、彼女達はバカなのか? いや、だってそうだよね、そうとしか思えないよね! え? だってこんなの通るわけないって分かるよね? ねえ!?
つい無言になってしまったタケルに、何を勘違いしたのか。リーダーは「ほら、あなた達の副担任の先生も認めているわ! わかったらほら、どいたどいた」
ネギを抱きかかえて2−Aの女子達を外へ引っ張っていこうとする。
「そんな!」
「タケル先生!!」
本当に悲しそうに首根っこを捕まえられて引っ張られていく彼女達の顔と「あ、ちょ、まって」と言いつつも女子高生徒たちにもみくちゃにされるネギの姿にため息をつく。
「待った」
短い言葉で、だが確かにタケルが言う。
「……さっきの言葉は本気で言ったのか?」
タケルの確認に、リーダーは一旦「?」と首を傾げたものの、すぐに得意な笑みを浮かべて頷く。
「ええ、もちろん」
「だったら、どくのは君たちだ」
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