第陸話 《毒と剣》 〜前編〜
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層主街区の《テルミナ》で目撃情報があったヨ。何でも歌を歌ってるとか何とか」
「歌?」
そう、とアルゴは頷く。
「何でも物凄い上手いらしいけど、聞いたことないから分からないネ」
「そ。情報有難うね。今後もいい情報があったら買わせてもらうわ」
ドリンクを一息に飲み込み、アルゴへと背を向けようとした直後だった。
「ところでちーちゃんヨ」
アルゴが何気ない声でチルノを呼び止めた。
「誰がちーちゃんよ。誰が」
「アサシン組織って知ってるカ? 有名な殺人代行集団らしいんだガ」
チルノがアルゴに振り返ると、彼女がよく分からない笑みを浮かべていた。
「まぁ、知ってるわよ。それが?」
「最近、動きが活発になっているらしいから気をつけてナ。無用の心配だと思うけどネ」
「貴重な情報有難う。気をつけさせてもらうわ」
アルゴに背を向け、出口の扉を開け放って主街区へと繰り出した。
○●◎
「おい」
暗闇の中からかけられた声に、ゆっくりと振り返る劇役者風の男。
声のした方向には一人の少女がいた。
緑の瞳に、桃色の頭髪の上にちょこんと帽子が乗っており、服装は冬用の学生服のようなものを着ていた。
「おや、君だったか。彼らはお気に召したかね?」
いんや、と首を振る少女。
「アイツらはどうも脆すぎる。オレが一撫でしたら大概壊れた」
「大概、ということは壊れていないのもいるということかね?」
「二回目で壊れた」
残念そうに肩を竦める少女。
「ふむ……。まだ弱い、と?」
「いや、どうだろうな。人間は所詮、皆こうなのかもしれないとすら思うからなー……。弱いくせにを強がって、んで死にそうになったら命乞いをする。下らんね。本当に下らん」
彼女は先程まで三人のプレイヤーを一度に相手にしていたはずなのだが、それすら『下らん』と評する彼女の戦闘能力は、はっきり言えば異常だ。
少女は不敵に笑いながら、劇役者風の男をにびしっと指を突きつける。
「それで何だが、お前のお気に入りのヤツとーーーー」
「残念だが、それは無理だよ。私にも予定がある」
ちぇっ、と少女は不貞腐れた風に床を蹴った。
たったそれだけで床が大きなヒビが走ったが、そんな程度のことは気に留めないとでも言わんばかりの態度で少女は続ける。
「それで? 脚本は順調に進んでいるのか?」
「勿論、順調じゃないさ」
「そうか。それは良かった」
かっはっはと快活に笑う少女につられるように、劇役者風の男もくつくつと笑い出した。
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