第陸話 《毒と剣》 〜前編〜
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一度も無い。
どこにいるのか分からないのであれば、情報屋に頼むか、もしくは自分の足で稼ぐか、だ。
足で稼ぐのは非効率過ぎる。今までの階層を全て回って、その上全ての街を調べなければならない。
ならば、
「あの情報屋を頼るのは嫌なんだけど……。仕方ないのかな」
溜息が出るほどの憂鬱だが、そうも言ってられない。
すぐにアルゴへメッセージを送信し、返信を待つ。
メッセージの内容は当たり障りのない、『会いたいのだけど、どこにいる?』というものだ。
果たしてその返答は、『今第十二層主街区のNPCレストランにいる』と返ってきた。文面から察すると、アルゴから向かう気は無いらしい。
「……まったく、本当に面倒だわ」
○●◎
「いや〜わざわざ呼び出しちゃって悪いネ!」
のNPCレストランで緑色のスパゲティーを口に入れているアルゴは、ボックス席の正面から向かい合うかたちのチルノに罪悪感皆無の声で喋りかける。
やってきたウェイターをドリンクだけ注文し、アルゴに向き直る。
「で、知ってるの?」
「知ってるヨ。但し、700コル」
ウインドウを呼び出し、金貨の入った小さな袋を叩きつけるようにテーブルに置く。
「おおう……。出し惜しみしないネ」
こんなのはした金じゃない、と僅かな苛立ちを表情に映した。
その苛立ちが何を理由に出て来たのかは、よく分からなかった。
「分かってるヨ。速く喋れって言うんだロ? それじゃ、簡単にだけど……」
一旦声を途切らせ、ウェイターが来たことを指で示す。
ドリンクを受け取り、ドリンクをすするのを確認してからアルゴは話し始めた。
「……まず、名前はミスティアだヨ。君らと同じみたいだけど、最前線には出てないから知名度は低いネ」
「同じ、って……まさか」
そのまさか、とアルゴは指を立てる。
「ミスティアはバグプレイヤーだヨ。どんな能力かは……知らないけどネ」
肩を竦めるアルゴをよそに、チルノは頭の中で思考を展開する。
「(ミスティアがバグプレイヤーであることを妬んで誰かが暗殺者に依頼した? それとも単純にそれを知らない状態で狙われた?)」
「……どうかしたカ?」
チルノは半ば無理矢理に思考を中断させ、アルゴに続きを促した。
「それ以外はあんまり情報は無いネ。どこかのギルドに入ってたってわけでもなさそうだし、前線に出てたわけでもない。どうして能力が露見したのかもよく分からないネ」
お手上げ、というように両手を上に持ち上げた。
「居場所は知ってる?」
「知ってるケド……。300コルだヨ」
そう言ってにんまり笑顔で手を出してくるアルゴ。
チルノは大きく溜息を吐き出して、その手の上に300コル分の金貨を勢い良く叩きつけた。
まいど、とコルをウインドウに入れ、アルゴは開口する。
「十
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