第陸話 《毒と剣》 〜前編〜
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ただろう。
「人っていうのは難儀よねぇ……」
微かに苦笑して、六本の片手剣を呼び出し、それを一本の両手剣に統合して背中に背負う。
チルノの長いようで短い一日は、こうして始まった。
○●◎
いつものように依頼無き日々をどうやって過ごそうかと宿屋のフロントでぼうっとしながら朝食を食べていると、唐突に声をかけられた。
「おい」
面倒臭そうな挙動で声をかけられた方を見ると、そこには男が三人立っていた。
男達は頭髪の色や髪型、顔の形などは違うものの、全員が全く同じデザインの胸に大きな瞳が描かれた濃紺の服に身を包んでいた。
「…………」
「少々質問をいいか? 探し人がいるんだ。こんなヤツなんだが」
チルノの沈黙を了承と受け取ったのか、リーダー格と思われる男が同じ少女の写真をいくつかテーブルの上に放り落とした。
「……見たことないわ」
写真の少女は黒の帽子を被り、くすんだ桃色の髪に黒と白が基調となった服を着ていた。
一枚一枚を手に取ってみても、その写真に映る少女にチルノは見覚えがなかった。
「ちなみに彼女の名前教えてくれない? あと、一枚もらっていい?」
写真を全て腰のポーチに放り込み、リーダー格の男はチルノに背を向け、入り口の扉を開け放って出ていった。
チルノはしばらく男達の出ていった扉を睨めつけるように見ていたが、やがてぼそりと呟いた。
「ーーーーどう思う?」
「それがさっきの奴らのことなら、アイツらは恐らく殺し屋、もしくは暗殺者連中だろうな」
独り言のような声量にも関わらず、それに即座に声が帰ってきた。
「カーソルは緑だったわよ?」
「仲介人のようなものだろう。アイツらみたいのがいないと仕事が成り立たないしな」
暗殺者の仕事は要は誰かの依頼を受けて人を殺す。
そのため依頼を受ける方法は彼らのアジトに直接赴いてもらうか、もしくは街に仲介人を置き、それを通して依頼を知るしかない。
人員や手間を省くならば前者、安全な方法を求めるなら後者を選ぶだろう。
「この娘については?」
「さあ? 少なくとも俺は知らん」
声の音源はチルノの背後で背を向けて椅子を軋ませている少年で、彼に向かい合う形でマントを被った一人の少年が何喰わぬ顔で魚が挟み込まれたハンバーガーのようなものを食べていた。
「で、どうするの? 団長さん」
「決めるのはお前だ。今回厄介事に巻き込まれたのはお前だからな」
少年はウェイターが持ってきたフレンチ風の朝食を口に運びながら言う。
「好きにしろ、って?」
「ああ。少なくとも俺がお前ならそうする。手助けが必要か?」
いらないわ、と薄い笑みを浮かべながら言って、チルノは宿屋の外へと出た。
○●◎
外に出たはいいものの、先述の通りチルノは被写体の少女を見たことは
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