第一部 剣技
第1話 剣の授業 (1)
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ちなみに《キリト》というのは、俺、桐ヶ谷和人のあだ名である。
思わず呆然と立ち尽くしていると、横から聞き慣れた男の声を掛けられた。
「泣かせてやんのー、キリの字よぅ」
「チンピラか、お前は」
俺は、クラスメートの壷井遼太郎──何故か《クライン》という名を自称している為、現在はそのまま通称と化している──に言い返した。更に続ける。
「お前って、見る度オッサン化してるよなー。俺らまだ16歳……高1なのに、お前は36ぐらいに見えるぜ」
「いつまでもお子さま顔なキリトに言われたかねえよ」
「おい、誰がお子さまだよ」
若干劣等感を抱いている、自分の顔についての指摘。俺は半笑いを浮かべた。
「悪い、性格もお子さまだったんだな。なら仕方ねえや」
「…………」
俺は持ち歩いてるフルーツナイフ(勿論、いつでも果物を食べられるように)を取り出すと、くるっと回した。
「おまっ、なに持ち歩いてンだよ! 殺る気満々か!! さっきのは冗談だっての。どーせ殺されんなら、アスナさんみたいな女の子らしい美人に」
「そうか。願いが叶わなくて残念だったな」
そんな言い合いを続けている内に、チャイムが鳴った。
「次の科目、なんだっけ?」
俺が聞くと、「実技だろ」と返ってきた。俺は目を輝かせた。
「も、もうそんな時間だったのか!」
「まあ少なくともパン食う時間じゃねえけどよ。《実技》はお前の超得意科目だもんなー」
「パンはいつ食べても旨いんじゃないか? 今日は何するんだろ」
《実技》とは、家庭科やら体育やら美術やら音楽やらのことではない。
俺達の?実技?は──
「今日は《剣》らしいぜ」
「うおっ。ラッキー」
《戦闘練習》。剣や弓、槍を使う授業。
別段、不思議ではない。この世界は、森などに出ると、たちまち野生のモンスターと遭遇してしまう危険な世界──そう、RPGとかに出てくる、あの《モンスター》だ。ちなみに黄色くて「ピカ!」とか鳴くような可愛いデフォルメモンスターではない──まあ、何処かには存在するかもしれないけど。
ようするにこの世界は、リアルRPGだ。
例えば実際のRPGでも、街の外では、スライムとかが出現する。その時、主人公達がなんの武器もMPも持ち合わせていなかったら? きっと大体の場合、即座にゲームオーバーだろう。
ゲームなら、仮に死んだとしてもただセーブポイントに戻る。しかしこの世界は、さっきも言ったように、リアルRPGだから、負けたら人生そのものがゲームオーバー。ここがゲームと現実の、大きな相違点だと思う。
俺達は、この世界で生き残る術として、学校で《戦闘》を学ぶのだ
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