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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
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火球は出ずに、ゴーレムのおなか辺りが爆発したぐらいだった。ゴーレムのおなかから、わずかに土がこぼれたぐらいで、ゴーレムは全く気にせず、歩き続けている。
 それを確認したキュルケが叫ぶ。
 
「無理ッ! こんな絶対に無理よっ!」
「退却」

 タバサも同様の提案をする。
 しかし、ただ一人ルイズだけは諦めず、ゴーレムに向かって走り出した。
 それを確認した士郎が、烈風のごとき速さで走りこみ、ルイズの体を抱きかかえた。

「何をやっている! 死ぬ気かっ!」
 
 士郎がルイズに向かって怒鳴ると、ルイズは今まで見たことがない士郎の態度に驚きながらも、目からぼろぼろと涙をこぼしながら訴えた。

「だって……、わたしは貴族だものっ! 魔法が使える者をっ、貴族と呼ぶんじゃないわっ! 敵に後ろを見せない者をっ―――貴族と言うのよっ!!」
 
 鳶色の瞳から涙をぼろぼろと流しながらも、胸を張り訴えるルイズを見て、一瞬呆気に取られた士郎だったが、しかし、すぐに表情を厳しくさせて怒鳴った。

「だがっ、死んだら終わりだっ! 馬鹿がっ!」
 
 すると、ルイズは上げていた顔を伏せ、震える声で言った。
 
「っ……それに、わたしは証明したいの……」
「証明?」

 いきなり顔を伏せたルイズに、訝しげな顔をすると、ルイズは伏せていた顔を勢いよく上げて言った。

「わたしがっ。わたしがシロウの主だって、胸を張って言えるようにっ! シロウの主に相応しいんだってっ! シロウが……」
 
 そこまで言うと、ルイズはその端正な顔をぐしゃぐしゃに歪め、赤く染まった白い頬の上に涙をぼろぼろと流しながらも、士郎を真っ直ぐに見つめ震える声で続きを口にする。
 
「シロウが……シロウがわたしのことを……俺の主だって……胸を張って言えるように……」
「ルイズ……」

 そこまで言うと、ルイズは顔を伏せて、嗚咽を漏らしながら泣き出した。
 そんなルイズを見下ろした士郎は、ルイズの頭に手を置き、優しく撫でながら耳元に囁く。

「十分だ……今のお前の姿だけで、俺は十分に誇れる。お前は最高のマスターだ……」
「ほっ……本当?」
 
 その言葉にルイズはおずおずと顔を上げるのを見て、士郎は優しく笑った。

「ああ、本当だ」

 士郎が頷くのを見たルイズが、胸の内から湧き出てくる感情のまま衝動的に士郎に抱きつこうとしたが、それを防ぐかのように頭上からタバサたちを乗せた風竜が降りてきた。

「はいっ! そこまでっ! 早く乗りなさいっ、逃げるわよっ!」
「乗って!」

 それを聞いた士郎は、どこか不満気な表情を見せるルイズを風竜の上に押し上げた。
 ルイズが風竜の上に乗った事を確認すると、士郎はすぐにタバサに向き直り言った
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