第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
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してる?」
タバサのどこか悲しげな声に、士郎は自嘲気味に笑った。
「まあ……な」
「そう……」
辛そうに士郎を見たタバサは、逃げるように視線を手元の本に移した。
ルイズとキュルケが、士郎に何か言おうと口を開こうとしたが、それはロングビルの声に遮られた。
「ここから先は、馬車ではいけません」
馬車をとめながら言うロングビルに、ルイズたちが周囲を見渡すと、いつの間にか馬車は、深い森の中におり、馬車の前には、人が歩ける程度の小道が続いていた。
ロングビルの言葉に、ルイズは少々不満げな顔をするも、全員が馬車から降りた。
「なんか暗くて怖いわ……いやだ……」
キュルケが士郎の腕に手を回すと、ルイズは、負けじともう一方の士郎の腕に手をまわした。
「何してんのよ! 士郎の邪魔になるでしょ! 離れなさい!」
「何言ってんのよ! あんただってしてんじゃない!」
「わたしは主だからいいのよ!」
「何その理屈! 意味分かんない!」
「うるさいわね! 良いから離れなさい!」
士郎は両腕を拘束し、大音量で言い争う2人を苦笑いしながら見た後、助けを求めるようにタバサとロングビルを見たが、2人は士郎たちを置いて先に進んでいた。それを見た士郎は、空を覆う森の木の枝を仰ぎながらため息を吐いた。
「なんでさ」
言い争う2人はさらに激しさを増していく、士郎はそんな2人を引きずるようにして、ロングビルたちのあとを追って行った。
フーケを捕まえるよりも、二人をとめる方が難しいんじゃないか?
静かなはずの森の中、静寂を盛大に破壊しているルイズとキュルケを引きずりながら、士郎は真剣にそう思ったのだった。
一行が森の中を暫らく進むと、突然開けた場所に出た。森の中の空き地といった風情である。大体、魔法学院の中庭ぐらいの広さだろうか、その真ん中に話にあった通りの廃屋があった。
元は木こり小屋だったのだろうか。朽ち果てた炭焼き用らしき窯と、壁板が外れた物置が隣に並んでいた。
五人は小屋の中から見えないように、森の茂みに身を隠したまま廃屋を見つめた。
「わたくしの聞いた情報ですと、あの中にいるという話です」
ロングビルが廃屋を指差して言った。
どう見ても人が住んでいるとは到底思えず、また、そんな気配も感じられない。
ルイズたちがどうするかを相談しようとすると、士郎が声をあげた。
「俺が様子を見てくる、皆はここで待っていてくれ」
その言葉に皆が頷くと、士郎は素早く廃屋に近づいていく。
士郎が廃屋の窓から中を確認すると、案の定誰もいなかった。
小屋の中は、一部屋しかないようだった。部屋の真ん中に埃の積もったテーブルと、転が
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