第一章 土くれのフーケ
第十一話 エミヤシロウという男
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とを喜びながらも、こちらも他と同様興味津々にこちらを見ている。
逃げ場のない周りの様子に士郎はため息を吐くと、憎らしいほどに澄み渡った青空を仰ぎみると、語り始めた。
「まあ、そうだな……。俺には夢があるんだが、それを叶えるために世界中を廻っていた」
「「どんな夢?」」
ルイズとキュルケの疑問の声に士郎は簡潔に答えた。
「正義の味方」
「「正義の味方?」」
ルイズとキュルケは呆れたような顔をした。タバサは読んでいた本を強く握りしめ、ロングビルは一瞬浮かんだ悲しげな表情を隠すように顔を伏せた。
ルイズたちの返答に苦笑いをした士郎は、それでもまじめに答えた。
「まあ、そんな事を聞けば普通はそうだよな。だが、俺は本当に『正義の味方』になりたい。助けを求める人、死に瀕している人……その全てを救える『正義の味方』にな」
その真剣な言葉に、からかおうと思っていたキュルケも何も言えず、馬車の中に静寂が広がった。
しかし、意外な人の言葉でその静寂は破られる。
「―――無理」
いつの間にか本から顔を上げたタバサが、何時もの無表情ながらにして、真剣な雰囲気を漂わせながら口にした。
「全てを救うなんて無理」
いつもならぬタバサの態度に、キュルケとルイズは驚いた。
士郎はタバサの返事に小さく目を見張ると、タバサの言葉に頷く。
「―――ああ、確かにそうだな。そう全てを救うなんて出来るはずがない……十人の人を救うため、一人を見捨てた。百人の人を救うため十人を無視した……全ての人を救うことなんて出来なかった……」
士郎の悲しげな様子に、ルイズたちは顔を伏せたが、タバサだけは真っ直ぐと士郎を見つめていた。
「それでも、あなたは『正義の味方』を目指す?」
タバサの視線を感じながら、士郎は青空を仰ぎみると、何かを思い出すように目を細める。
「『約束』……だからな」
「「「「『約束?』」」」」
ルイズたちの疑問の声に、士郎は過去を思い出すように目を閉じた。
「義父親との『約束』でな。義父親が死ぬ前に『正義の味方』になれなかったと後悔するように言うのを聞いてな……つい、代わりに俺が『正義の味方』になると、義父親に『約束』をした」
「それが『正義の味方』を目指すのをやめない理由?」
士郎はタバサの言葉に頷いた。
「ああそうだ。だがまあ、それも理由の一つでしかないが。まあ、結構大きな理由だな。俺にとって、義父親は『正義の味方』みたいなものだったからな。だからか、義父親があんなことを言うのが許せなく……。だから、そんな『約束』をしたんだろうな」
「今も全てを救う『正義の味方』を目指
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