崑崙の章
第6話 「貴様らに名乗る名前はない!」
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う男もおとなしく縛についた。
俺は、退避していた水夫と共に身代金を載せた船を岸へとつける。
「ふう……日が昇ったら上流、下流に仕掛けた縄を全て回収しなけりゃな。役には立たなかったけど」
「上流で待機していた漁邑のやつらはどうします?」
「ああ……それも無駄になっちゃったな。長江に流すはずだった丸太は、資材として白帝城で引き取ってもらうように黄忠さんに言っとくよ。まあ、最悪上流で漁舟を沈めるようなことにならなくて何よりだったから、良しとしよう」
「しかし、あれこれ考えるものですね……さすがは天の御遣い様です」
水夫のおっちゃんが、頭を下げると、他の水夫まで平伏しようとする。
「おいおいおい! やめてくれってば! 噂だよ噂! あんなのただの噂で、俺はただの人間なんだってば!」
「しかし、おいらは見ましたぜ! あの厳顔様を庇ったとき、青白く光っておいででした! まさしく天の光でさ!」
「ああ! 空には月もねぇのに、まるで月の光が御遣い様を守っているようでした!」
「おいらも見ましたぜ! はぁ〜ありがたや、ありがたや!」
うっ……ほんとに拝み始めやがった。
だから、これはサイコバーストの一種で、アイスキャッスルっていって……って、精神波なんて俺の世界でも普及してない技術だもんなぁ。
漫画やゲームのない世界じゃ、超常現象を目の当たりにしたら神秘的に全部信じちゃうわな。
高度に発達した科学は、魔法と区別がつかない……学者さんは偉いよ、ちゃんと予見している。
「と、とにかく、日が昇ったら上流と下流に分かれて作業するからね。もうそろそろだけど、少しは体を休めておいてくれ」
俺は、青白くなりだした空を見ながらそう言って、船を下りる。
すでに辺りは明るくなっており、松明の火に頼らなくても視界は開けていた。
(まいった……天の御遣い教なんてできたらどうしよう? 黄巾にかわって討伐されかねん……)
やっぱ、うかつにサイコバーストは見せちゃダメだな、うん。
頭をポリポリと掻きつつ、黄忠さんがいる場所へと移動する。
そこには縄を打たれ、うちひしがれる様に顔を俯かせる錦帆賊の頭目の沈弥と、それを悲しい目で見ながら佇む厳顔さんもいた。
「船の方はこれで回収完了です。あとの始末は日が昇ってから、罠を回収してきますね」
「はい、お疲れ様ですわ」
黄忠さんが俺の報告に、にっこりと答える。
すると、今まで俯いていた頭目の沈弥が顔を上げた。
「罠、だと……?」
沈弥は俺を見上げるように睨む。
あー……まあいいか。
「そうだよ。お前さんたちが逃げた場合も想定してね。周辺の漁邑に声をかけて、上流と下流に荒縄を幾重にも長江を塞ぐように仕掛けさせてもらった。あと
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