崑崙の章
第6話 「貴様らに名乗る名前はない!」
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んなことはどうでもいい! 俺はヤケになってあの女を闇討ちして返り討ちにあった。そして、その罰としてテメエに棒打ち十五回打たれたとき、俺はテメエへの復讐を決めた!」
沈弥がそう叫ぶと、右腕を上げる。
その合図に、周辺の江賊たちが弓を手に取り、厳顔へと狙いを定める。
「俺はテメエを殺して、身代金を奪い、こいつらと共に黄巾の残党と合流する。そして別の土地で一旗上げてやる! テメエへの未練はここで断たせてもらう!」
「……そうか。全てはわしの身から出た錆じゃったか……」
厳顔は、ふっと顔を歪ませ、自嘲する。
だが、次の瞬間には元の精悍な顔つきに戻った。
「わし自身を狙ったのならばここで討たれてやってもいいと思った……じゃが、なぜ白帝城を巻き込んだ! 何故太守を攫うような真似をしたんじゃ!」
「ふん……貴様を誘き寄せる為よ。巴郡にいたんじゃ、甘寧が抜けて弱体化した錦帆賊の残党じゃ太刀打ちできねぇ。それにあそこには、あのクソ女もいる。お前を母のように慕うアイツがいたんじゃ、お前を殺せねえ」
「……それだけではあるまい。劉表殿を恨む理由は何じゃ」
「そいつは俺じゃねぇ……錦帆賊の奴らの恨みよ。奴は甘寧が抜けるきっかけを作ったことに恨みを持っている。甘寧がいればここまで勢力が小さくなることはなかった、とな。俺はそれを、お前を釣る餌として利用させてもらっただけだ」
「そんな理由で……」
「ふん! 都合よく一時的に太守になった奴が劉表への忠誠心が薄かったんでな……これ幸いと利用させてもらったぜ。おい、太守のヤロウも連れて来い。ここで始末する」
沈弥が部下に伝えてすぐ、太守が船倉からひっぱりだされた。
その顔はボコボコに腫れあがり、ヒューヒューと息も絶え絶えになっている。
「知っているか、厳顔。こいつはな、身代金の半分をもらう条件で、こんな大芝居をうつことに承諾したのよ。お前を殺し、自分は罪を逃れて、身代金を持って悠々暇乞いするつもりだった。自分は誘拐されていたので厳顔様を助けられませんでした。私の責任です、と劉表に涙ながらに言うつもりだったそうだ! ハッ! 漢の官吏など、どいつもこいつもこんなもんだ!」
「やはり……そうじゃったのか」
厳顔の言葉に、ふと違和感を覚える沈弥。
おかしい。
こんな聡明なやつだったろうか?
だが、浮かんだ疑問も目的を達成できる興奮に、すぐに霧散する。
「ハハハハハ! 馬鹿な奴だぜ! お前なんぞに金を渡すわけねえだろうが! 厳顔共々ここで殺して、白帝城に送り付けてやるのよ! いや、それより長江に死体を晒してやる! そうすりゃ他国の太守を巻き添えにしたことで、劉表の周辺諸侯への名声は地に落ちらぁ!」
沈弥の言葉に、劉表に恨みを持つ
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