第二十九話「……インストール♪ アンインストール♪ ――え、だめこれ?」
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「なるほど、読めたぞ……聖賢使いが祝福を受けるとき、体に入れるのは――」
ゼノヴィアが真相に至ったようで忌々しそうに顔を顰めた。
「そうだ、聖剣の少女よ。因子を持っているものから因子だけを抽出し、収集して結晶化したのだ。こんな風にな」
ハルパーが懐から取り出したのは、光り輝く球体。淡い光が聖なるオーラとなって周囲を漂っている。
「これにより聖剣に関する研究は飛躍的に向上した。これもすべて君たち被験者のおかげだ。礼を言うよ」
――っ! こいつ……!
思わず殴りかかりそうになるが、木場の押し殺した殺気に思い留まった。
「同士たちを殺して、聖剣適正の因子を抜いたのか……?」
「そうだ。この球体はその時のものだぞ。三つほどイングリッドたちに使ったがね。まあイングリット以外は因子に体がついて来れず死んでしまったが。ちなみにこれが最後の一つだ」
「……ハルパー・ガリレイ。自分の欲望、自分の研究のためにどれだけの命を弄んだんだ」
木場の握る拳から血が流れる。漲る殺気に呼応して魔力のオーラが木場の全身を包み込んだ。
「ふん。それだけいうのならば、この因子は貴様にくれてやる。環境が整えば量産できる段階まで進んでいるのだ。この因子の使い道はない」
ハルパーは興味が失せたかのように結晶を放り投げた。地面を転がった結晶は木場の足元に辿り着く。
「みんな……」
木場は静かに屈んでそれを手に取った。
慈愛に満ちた顔で、しかしどこか悲しそうな、昔を懐かしむような表情で結晶を優しく撫でる。
木場の頬を一筋の涙が零れ落ちる。零れ落ちた涙は結晶に当たり散って行った。刹那――。
木場の持つ結晶が淡い光を放ち始める。
光は徐々に拡大して校庭全体を包み込むと、地面の各所からポツポツと光が現れ形を成していった。
やがて人の形を取った光は木場を囲む。
もしかして、彼らは――
木場は懐かしそうに目を細め、彼らを見つめた。
「みんな……僕は、僕は……!」
木場の慈しむような、それでいて慟哭のような悲しみに満ちた声が上がる。やはり、彼らは聖剣計画に身を投じた人たちなんだ。
「本当はずっと思ってたんだ……。僕だけがここにいていいのだろうかって。僕が、僕だけが生きていていいのかって……。僕より大きな夢を持った子がいた。僕より生きたかった子がいた。それなのに、僕だけが平和な暮らしを送っていて……それが、みんなに申し訳なくて……っ」
――っ! ……あいつ、ずっとそんなことを思ってたのかよ。
木場の抱えている苦しみは俺には理解でき
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ