第四十七話 アメリカ軍人その八
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「しかし空自さんは知らないがうちもな」
「給養の人が威張っているんですか」
「そうした人間が多い」
「料理作ってるのが偉いんですか」
「してやっていると思って勘違いする」
「それっておかしいでしょ」
高橋は工藤の話を聞いて眉を顰めさせ口を多少尖らせてこう言った。
「だって自分達の仕事ですよね」
「そうだ」
「それをしてるだけじゃないですか」
「しかしそれでもだ」
「威張るんですか、給養の人って」
「それでうちでは給養の人間はあまり出世させない」
そうしているというのだ。
「つけあがらさせない為にだ」
「何かややこしい事情があるんですね」
「俺も給養員は好きじゃない」
工藤は憮然としてこうも言った。
「威張っている奴を見てきた」
「実際にそうした人がいるんですね」
「教育隊でいきなり見て嫌な気持ちになった」
「自分が仕事をしているだけなのにですか」
「だから好きじゃない」
それでどうして威張るかというのだ。工藤が彼等を嫌う原因はそこにあった。
「陸自さんの方針は正しい」
「いやいや、それでもだよ」
一佐は笑って工藤の今の言葉は否定した。
「飯はまずいよ」
「多少まずくともです」
「けれど海自さんは船の中だからね」
海上自衛隊は艦艇での勤務を念頭に置いており教育でも念頭に置いている、船の中では娯楽が少なく食べることが数少ない楽しみになる。
だからその食事がだというのだ。
「それは無理だろ」
「それはその通りですが」
「それでも給養員の態度は問題か」
「士でもかなり酷いですから」
威張っているというのだ。尚士とは普通の国の軍では兵士のことを示す。
「いや、本当に」
「美味い飯を食えるという状況でも大変か」
「そうですね。人が問題ですから」
「難しいものだよ」
二人でこんな話をしたが横で聞いていた高橋はそうしたことから悟ってこう言った。
「何となくですけれど」
「わかってくれたかな、違いが」
「多少ですが。三つの自衛隊でそれぞれですね」
「違うのだよ」
「そうですか」
「兵器やそういった違いだけでゃなくてね」
一佐は親しみを込めて高橋に話していく。
「三つの自衛隊でそれぞれ違うから」
「ううん、そうなんですね」
「自衛隊の外から見たらわからないみたいだね」
「実際にわからないです」
警察官、自衛隊と同じく階級社会に生きている高橋から見てもそうだった。
「そうなんですね」
「ただ金曜日は一緒のものを食べるよ」
「あっ、カレーですね」
「そう。曜日をはっきりさせる為にね」
三つの自衛隊の何処でも金曜日はカレーだというのだ。
「昼に食べるんだよ」
「カレーですか」
「勿論どういったカレーかは部隊のそれぞれで違うがね」
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