第三十三話 合宿の終わりその十二
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シャム猫に茶色の毛の猫までいる。かなりの数がいる。
しかもどの猫の首にも赤いスカーフがある、それを見ればだ。
「飼い猫ばかりね」
「しかもどの猫ちゃんも赤いスカーフ巻いてるから」
「飼い主は同じなのかしら」
「そうみたいよ」
景子はこう彩夏に話した。
「工場の中に猫ちゃんがいるのって珍しいけれどね」
「ああ、この猫達な」
ここで案内役の工場員のおじさんが言って来た、青いつなぎの作業服と白いヘルメットが似合っている。
「実は自然に居着いて増えてさ」
「それでなんですか」
「誰かが飼ってるんですね」
「いるのはここだけだよ」
この辺りだけだというのだ。
「工場の中でもね」
「やっぱり工場の中に入ると駄目だからですね」
「それでなんですね」
「そうだよ、危ないし作業の邪魔になるからね」
だからだとだ、おじさんもそこは言う。
「車ではねても可哀想だろ」
「ここからは動かないんですか」
「餌もないからね」
このことが大きかった、猫も食べないとならないのだ。
それでだ、食べるものがない場所はというのだ。
「ここは食堂でさ」
「あっ、工場のですね」
「その中の」
「そうだよ、ここに集まってるんだよ」
今の様に赤いスカーフを巻いた猫達がだというのだ。
「そうなってるんだよ」
「ですか」
「じゃあこの工場の他の場所には猫ちゃん達いないんですね」
「そうなんですね」
「ああ、いないよ」
餌がない、だからだ。
「鼠もいないからな」
「あっ、鼠もいないんですか」
「工場の中には」
「鼠は産業の敵だよ」
おじさんは五人だけでなく彼女達以外の生徒達にもこのことを話した、鼠の恐ろしさについてである。
「色々噛んでくれるからな」
「電気のコードとかですね」
「そういうのを」
「そうだよ、しかも増えるんだよ」
鼠算という言葉通りに。
「あっという間にな」
「食べるものは、ですよね」
「鼠は何でも食うからな」
雑食である、それこそその辺りにある雑草でもゴミでも何でも食べる。
「餌には困らないんだよ」
「その辺り猫ちゃんと違いますよね」
「猫ちゃんはそこまではいきませんから」
「工場の中はいつも綺麗に」
おじさんは真剣な顔で彼等に語る。
「それを忘れるとね」
「鼠が出て来るんですね」
「あとゴキブリもですね」
「まあそこも見てくれたらいいよ」
工場の中の清潔さもだというのだ。
「毎日丁寧に掃除しているからね」
「そういえばここも綺麗ですね」
琴乃は今自分がいる周りを見回した、猫達がのどかにくつろいでいるこの場所をだ。
「何ていいますか」
「草も雇っている清掃員の人が抜いてくれるんだよ」
そうしてくれているというのだ。
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