Mission
Mission9 アリアドネ
(8) マクスバード/エレン港 D~シャウルーザ越溝橋 @
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言えといわれれば――
(この子はただそこにいただけだ。俺のそばに。ルドガーの横に。それだけが、それこそが変化だ。俺たちはバラバラになって独りのはずだった。でもこの子は、ルドガーが仲間に囲まれるまでフォローし続けた。俺が呼べばいつでも現れて、他愛ない話をしながら探索に協力してくれた。俺たちを決して独りにさせなかった)
誠意を示す。愛情を示す。身を案じる。心を労わる。無言で「あなたがスキです」と言い続けながら寄り添った。ただ形式的な行為を差し出すよりずっと効果があるやり方だ。
「心を込めて」そばにいた。それこそがユティの最大の行いだ。
「あんたなら分かるんじゃないか。あんた、意外と良識派みたいだからさ」
「……ひどい誤解だ」
「いやいや絶対そうだって。マジな外道は、弟が詐欺まがいの仕事させられてたら、けしかけた男Aを殺るくらいはするぜ? 俺が言うんだから間違いない」
アルヴィンの得意げな顔を見て、ユリウスは思わず噴き出しかけた。自慢することではない。
「ああ――お前に比べたら、俺なんてまだまだなんだろうな」
独りだと思っていた。世界でユリウス一人だけがこんな重荷を背負わされているのだと。それこそ馬鹿げた話だ。
自分には、弟だけではなかった。
「ユースティア。聞いていいか」
「さっきの続き?」
「続きってのは?」
「ユリウスは、ワタシが正史に来た動機が疑わしい。動機の内容がルドガーのためじゃなかったから。さっき追及された。クロノスが出て中座したけれど」
「疑った理由がそれ!? 気にすべきとこもっとあるでしょーが!」
「諦めて、アルフレド。これがなきゃユリウスじゃない」
「おたくは一番諦めなくていい立場の子!」
「……お前たちは俺をどんな目で見ていたんだ」
「「ブラコン」」
「自覚していても人から言われると効くなあ……」
がっくりと項垂れたユリウス・ウィル・クルスニク(28)。
「バランおじさまから習った。スキと思いたくない人は相手をズタズタにする。キライと思いたくない人は相手を大事にする。ヒトの感情って、自覚したくないと思えば思うほど反転するの」
彼女の「バラン」を思い出しているのか、目を伏せてユティは語る。
「ルドガーはユリウスにコンプレックスがあった。でも同時にユリウスがスキだから、そんなモノは自分の中にはないんだって思いたかった。ワタシが手を加えなかったら、ルドガー、ユリウスを守るためにアルフレドたちを殺してた。それはダメだから。ならユリウスだけキライで、みんなをスキになれば、そのケースは回避できる」
「――じゃあおたくの本当の目的は、ルドガーとジュードたちの殺し合いの阻止?」
ユティは首を横に振った。
「ワタシが殺してほしくない
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