Mission
Mission9 アリアドネ
(8) マクスバード/エレン港 D~シャウルーザ越溝橋 @
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「また貴様か」
クロノスがアルヴィンを睥睨した。
直後、ユティが大ジャンプしてクロノスに斬りかかった。ユティはクオーター骸殻に変身している。アルヴィンには指一本触れさせないと威嚇する。
「ほら、ボサッとしなさんな。ずらかるぜ」
ユティがクロノスと切り結ぶ隙に、アルヴィンはユリウスの腕を掴んだ。ユリウスは何とか立ち上がり、アルヴィンに付いて走り出した。後ろから、フリウリ・スピアを大きく薙いでクロノスを振り払ったユティが追走した。
時歪の因子化で痛む体を押して、アルヴィンの手を借りながらコンテナの間を逃げ回る。
無論、クロノスが相手では時間稼ぎにもならないと分かっている。されど、クラウンエージェント・ユリウスはこの粘り強さを以てこそ、今日まで大精霊クロノスを退けてきたのだ。
時空を司る大精霊といっても、視界は人間と同じ眼球頼り。全員が戦場のプロだったことが幸いした。クロノスの目を出し抜き、彼らはシャウルーザ越溝橋へ逃げ込むことに成功した。
普段ならば観光客で賑わうシャウルーザだが、今日はテロ厳戒令のおかげで人通りは少ない。
兵士に見咎められる前に、彼らは無人の露店の一つに火事場泥棒よろしく駆け込んだ。カウンターの陰で3人分の荒い呼吸が響く。
「アルフレド、どうして俺を助けたんだ」
ユリウスは真っ先に口を開いた。
「ワタシも聞きたい。解散、って言ったのに」
「『いつも』ならね。長い話が終わったら一旦解散なんだけど、ユティ、残るっつったろ。一人で残るってのはその後で別の誰かと落ち合いますって言ってるも同然だ。俺も昔よくやった。張ってみりゃビンゴと来た」
「……クロノスがココで出たのも聞いてた話と違うのに、アルフレドがユリウスを守ってくれるなんて……」
それなりに深い付き合いのユリウスだから分かる少女の当惑。この展開は彼女にとって、そして歴史にとっても既定事項ではなかったのだ。
「んで、ご両人、何で隠れて会ってたんだ? 俺は答えたぞ。そっちも洗いざらい吐け」
「……ゴメンナサイ」
「謝るのは後でいいから」
「怒らないの?」
「後で怒るに決まってんだろ。そりゃ俺も昔はおたくらの百倍えげつない生き方してきたけどさ、今は分かるんだよ、それやられる側の気持ちってヤツ。『俺』から教わらなかったのか?」
こうなっては隠す意味もない。ユリウスはユティを向き、「話してやれ」と告げた。彼と同じ色の目は当惑をありありと返したが、ユティは言われた通り、洗いざらい今日までの出来事を話した。
――スカリボルグ号からのユリウスとの共謀関係。ユリウスの分史探索からルドガーの援助まで全てが、父親の言いつけで世界を創り直す計画上のものだった。
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