3 勇者よ逃げ出すとはなさけないbyシラ
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れると嫉妬してしまいそうですから。キリトのように女気はないもので」
ずんと空気が重くなったような気がした。
「ど、どういい意味だよ。……じゃあ開けるぞ」
アスナの突き刺さるような視線をひしひしと感じながらもキリトが扉に手をかける。
これ以上空気に物理的圧力が加わるような幻覚は味わいたくないし、何より緊張感が削がれてしまいそうだ。
扉がゆっくりと開いていく。重そうなデザインの割にその動きは滑らかだ。
中は真っ暗で何も見えないがかなり広そうだ。そこへ徐々に灯りが灯っていくことで全容が明らかになってくる。
重い壁、そして緑色に輝く一対の何か。
「ぅ」
「あれって……」
キリトとアスナが揃って声をあげた。原始的恐怖を感じさせるそれ。
また一つ火が灯る。二本の太い足が見えた。
また一つ火が灯る。全てを斬ろうといわんばかりの巨大な剣が二本、気味の悪い色の胴体が見えた。
最後の火が灯る。悪魔的な顔立ち、悪魔的な角、悪魔的な全身が露となる。
「悪魔……ですね」
そこに立つのは初めての悪魔型のボスモンスターだ。名称はグリムアイズ――直訳で輝く瞳――
定番中の定番ともいえる恐怖の象徴。
シラは見る。アスナとキリトが顔を引きつらせるのを。ついでまた見る。叫び声をあげて全力で逃げ出す様を。
ドップラー効果で声がずいぶん違って聞こえる点からどれだけ彼らが必死なのかよくよく伝わるというものだ。
「全く、臆病ですね二人とも」
一人で立っていても仕方がない。シラも後を追って扉を潜った。
直後一階層にまで響きそうな轟音と衝撃がシラの背後で発生した。悪魔が全速力で壁へと突進してきたのだ。
扉が空いているのにボスは部屋から出られない。憎々し気に剣を振り回しシラを真っ二つにしようとするが見えない障壁に阻まれてシラには届かない。
それでも恐怖を抱かせる光景としては十分だ。シラのようなどこか破錠してしまっている変人でなければの話だが。
「すみませんね。本当は相手をしてあげたいんですけど生憎連れが逃げてしまったもので」
シラは丁寧に頭を下げて悪魔に謝る。
「そのうちまた来ますからその時はきちんと葬ってあげますから」
良い終えたシラは踵を返し歩きだす。パーティーの場所を表示させれば絶賛高速移動中だ。安全ポイントまで走り続ける気なのかとシラは推測する。
後方ではプレイヤーがいなくなったボス部屋と扉が勝手にしまっていく。
それを一瞥しシラはキリト達をゆっくりと追う。
「73階層のボスよりは楽しめそうですね」
爛々と瞳を輝かせて。
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