崑崙の章
第5話 「黄忠さん、お願いがあります」
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「……結構、大掛かりな計画だな、これ。賊如きがこんな策を考えたのか」
俺が椅子にもたれつつ呟く。
「それで、厳顔さんが到着したら余計な火種は困るから帰れと伝えた、そういうことですか?」
「は、はい……」
「そりゃ怒って帰るわな……実際、黄忠さんがここにいなければ、帰るその日は怒りで酒を浴びるように飲んで油断しまくりだったでしょうし」
「ぐ……まあ、そうじゃろうな。わし自身、そう思うわい」
「そこに黄巾が襲撃……厳顔さんと言えど、殺されていた可能性は高い。そして同日に誘拐された太守……厳顔さんが殺されたときは誘拐されていてどうしようもなかった、そう劉表様には言い訳できる、か……」
「お主……何を考えておる?」
厳顔さんが訝しげな顔で俺を見る。
黄忠さんと文官は、俺と同じ事を考えているようで、顔面が蒼白だ。
「その上で身代金……か。黄忠さんは、劉表様の元臣ですよね? 劉表様はどういう方ですか?」
「……身の丈八尺余り、威厳のある風貌ですが、お優しくて寛大な方です。内政を尊び、部下にも慕われていて、兵の命も大事になさいます。少々猜疑心が強いところがありますが……」
「となると……厳顔さんを殺した原因となる太守は、よくて放逐。悪ければ死罪もある、か?」
「……この場合でしたら、先に身を処することをどうするか本人に聞くと思います。死を選ぼうとするなら恐らく恩給を与えて放逐するかと……」
「それを見越していたとしたら……かなあ。うん、辻褄はあう、かな?」
「……ではやはり?」
黄忠さんの言葉に、俺は頷く。
厳顔さんもようやく思い至ったようだ。
文官は蒼白な顔で、がくがくと足が震えている。
「さて……そうなると、こっちがとるべき道は二つ……いや、一つですね」
「どうなさるので?」
「ん……文官さん、書状を二つ……いや、三つ書いて欲しいのですが」
「は、はっ……ど、どのようなものでしょう、か?」
文官が、ようやく絞り出すような声で尋ねる。
俺はちょいちょい、と文官を呼んで耳打ちする。
「可能ですか?」
「……最初の二つは大丈夫でしょう。ですが……」
文官はちらっと黄忠さんを見る。
黄忠さんは、俺と文官の視線に少し驚いた。
「え? え……っと?」
「黄忠さん、お願いがあります」
「は、はい」
俺の笑顔に、ちょっと訝しげに身体を引く黄忠さん。
まるで詐欺にあったような顔だ。
「白帝城の太守に返り咲きませんか?」
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