崑崙の章
第5話 「黄忠さん、お願いがあります」
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、はい! なんでもお聞きください!」
あからさまに態度が変わったな。
天の御遣いのネームバリュー、すげー。
「そもそもなんで太守は夜になるかどうかという時間に、川沿い付近にいたんです? 仕事か何かですか?」
「い、いえ……なんでも用事があるからと言って、太守様がお出かけになられたのです。本来なら護衛をつけるのですが、何故かいらないとおっしゃって……」
「なるほど……厳顔さん、太守が攫われるときに、周囲に警護の兵やお供はいましたか?」
「……そういえば、太守一人じゃったな。供がいない……じゃと?」
厳顔は今気付いたように訝しげに眉を寄せる。
ふむ……
「ちなみにこちらの太守は、どんな方ですか? 性格とか、仕事振りとか」
「そうですね……性格はあんまり褒められたものじゃありませんが、仕事はそれなりにできる方でした。ただ……少々自分の力を過大評価している節がありまして。俸給が安いことに何度か愚痴を聞かされたことがあります」
「わしは先日会っただけじゃが……度胸のない親父じゃったな。わしが詰め寄ったときは、腰を抜かしそうな勢いじゃった」
ふーん……
「ちなみに江賊に上納金を払うことで、襲撃をしないように交渉されていたと聞きましたが……それはどういった経緯でそういう話に?」
「ええと……太守様の元に江賊からの要求の竹簡が届けられたとのことで、劉表様が帰るまではそれで問題を先送りにしようということになりまして」
「ですが、すでに厳顔さんに援軍を頼んでいたのですよね? なのに何故そんな話に?」
「その……太守様が兵の損失は避けるべきだ、と厳顔様がお付きになる前日に言いはじめまして」
「なんじゃと!?」
厳顔さんが立ち上がろうとするが、隣の黄忠さんがどうどう、と座らせる。
「警備兵も黄巾討伐で引き抜かれておりましたので、今は四千程度の兵しかおりません。これで江賊退治している間に黄巾が攻めて来たらどうするか、と仰られるので……」
「厳顔さんに援軍を求める時は、どういう話で?」
「はあ……黄巾の敗残部隊がこの周辺に集まりつつあると、ある日太守様が仰られて……江賊の問題もあり、最初は専守防衛にしようという話だったのですが、ならば劉表様から万が一の場合は厳顔様を頼れとのお言葉もあったので、残った警備兵で江賊を討伐しつつ、白帝城は厳顔様にお守りしてもらおうと……」
「その意見はどなたが?」
「……よく覚えていませんが、確か厳顔様のお名前を出したのは太守様だったと思います」
うん、わかった。
限りなく黒に近いね。
「それで厳顔さんは、水軍でなく歩兵を率いてここに来た……そういうことですね?」
「うむ……援軍の書状にも、白帝城の防衛をお願いしたい、そう書かれておった」
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