崑崙の章
第5話 「黄忠さん、お願いがあります」
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とも知っているはず。巴郡の太守ですしね。それなのに運び役に指名した……」
「確かに……おかしいですわね」
「おかしいというか……ぶっちゃけてしまえば、罠です」
「罠……わしを殺す為、ということか」
厳顔さんが今頃そんなことを言う。
……マジで気付いてなかったんかい。
「となると恨みによる犯行、とわかるのですが……何故、巴郡に直接攻撃せず、白帝城でこんな騒ぎを起こしたのか、という疑問がでてきます」
「うむ……」
「考えられるのは、白帝城の太守に厳顔さん以上の恨みがあった。しかし、これだと厳顔さんを運び役に選ぶのはおかしいし、そもそも身代金なんて言わずに殺しているでしょう。なら、太守はどうして攫われたのか?」
「身代金目的じゃろう?」
「……俺は、身代金自体が目的じゃないような気がします」
「目的じゃない……? ええと、わたくしもわからないのですが、身代金が目的じゃないなら……なぜ太守を?」
「俺が犯人なら……身代金は手段じゃないかと。その手段を使う目的は二つ……一つは、身代金を取られることによる劉表様の名声を貶めること。もう一つが……厳顔さんの殺害」
俺の言葉に、黄忠さんが悩ましげな表情をする。
うーん……これだけじゃないような気もするんだけどな。
「俺が昨日、市場に行った時に聞いた厳顔さんの部下三千人が黄巾に襲われたこと……あれは江賊に雇われたんじゃないかと思うんです」
「なんじゃと!?」
「タイミング……時期が合いすぎなんですよ。撤退し始めて一番警戒が薄いときに襲われている。そしてその夜に太守も攫われた。一連のことが連動していたとしたら、第一目的が厳顔さんの命。第二目的が身代金を利用した劉表様の醜聞じゃないか……そう思えてしまうんです」
「江賊が、桔梗と劉表様の両方に復讐しようとしている、と?」
「ええ。そう考えると……もしかしたらこの誘拐、それ自体がブラフなのかも……」
「ぶらふ?」
本当にこれは誘拐なのか……?
俺がそう思ったとき、文官が冷や汗をたらしながら玉座の間へ入室してきた。
「い、今急いで身代金を集めるように指示しております。ただ、量が量ですし……今日中には」
「すいません。それはいいので、ちょっと質問しても宜しいでしょうか?」
俺が文官の言葉を遮るように手を挙げる。
「は? はあ……貴方は厳顔様の部下の方でしたか?」
あ、そういえばそういう名目でここにきたんだった。
「すまんの……言い忘れておったが、こやつは天の御遣いじゃ。故あって同行しておる」
「て、天の御遣い!? あの龍神という噂の!?」
「噂を真に受けないでください!」
……頭痛いわ。
「ちょっとした縁で同行しているんです。それで質問なんですが……」
「は
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