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無明のささやき
第四章
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島さん、お元気。私は、今、最高。離婚して正解。」
「ほう、最高か、それはよかった。心配して損したかな。まあ、それはいいけど、僕の方は最悪だ。」
「会社のこと、聞いてるわ。まったく、西野のボンボン社長は人を見る目が無いんだから。飯島さんみたいに優秀な人材をあんな仕事に就けるなんて。」
「まあ、優秀かどうかは別にして、僕には不向きだ。あの連中の中には会社の躍進に貢献した人も、優秀な人材も沢山いる。それの首を切れって言うんだから、まいったよ。」
「で、実績は上がっているの。」
「いや、ぜんぜん。仕事見付けて辞めて行く奴はいるけど、俺は一人も首にするつもりはない。御役御免になるのは覚悟の上さ。後は、お上の御沙汰を待つ。会社がどれほど忍耐強いか眺めている。」
飯島は、今の立場を率直に語った。
「気楽なのね。」
「ああ、気楽なもんさ。借金ゼロ。子供ゼロ。女房働き者。」
くすくすと笑う章子の声に、飯島の心は和み、ようやく昔の人間関係を取り戻せたような気がした。飯島が聞いた。
「ところで、さっき最高って言っていたけど、佐久間さんとはうまくいってなかったの。」
「ええ、最悪だったわ。愛子のこと、自分の子供かどうか怪しいなんて言い出したの。昔、二人目作ろうと思って頑張ったけど駄目だったでしょう、そのことを思い出したみたい。最近になって、あの人、医者に行って調べたらしいの。そしたら種が薄いって言われて・・・。でも、よく聞いてみれば妊娠出来ないほど薄くはないのよ。」
飯島は、章子に会ったら聞いてみようと思っていたことを、あっさりと口にした。
「ところで愛子ちゃんは僕の子供じゃないよね?」
章子は、深刻ぶった顔を急に和らげ、にやりとして答えた。
「もし、そうだったとしたら、飯島さんと結婚しているわ。私は飯島さんが好きだったし。でも、どう考えても佐久間としか思えなかったから、佐久間に責任とってって、言ったの。」
飯島は、ふーっと吐息を漏らした。すると、急に肩の力が抜けた。章子は、
「いやだ、そんなこと心配していたの。馬鹿みたい。だから、一度も家に遊びにこなかったんだ。」
と言うと、お腹を抱えて笑い出した。その時、章子の心に若かりし頃の苦い思いが蘇った。飯島とは、一番危険な日、祈るような気持ちで肉体を重ねたのだ。しかし神様は章子の望みを叶えてくれなかったのだ。
笑い続ける章子をちらりと見て、飯島は困惑気味に言った。
「笑うなよ。なんだか、馬鹿にされてるみたいだ。でも、出産は結婚して8ケ月目だったはずだけど。」
章子はひとしきり笑うと、ハンカチで涙を拭いながら答えた。
「ええ、そう。早産だったの。でも、本当は飯島さんの子供が欲しかったなあ。でもだめだった、頑張ったけど。」
少し間をあけ、
「実を言うと、ずっと営業やっててほとほと疲れちゃったの
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