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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第五十一話 エル・ファシル
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・ファシルで売りさばいているとメルカッツ閣下から聞いている。そして民生品を購入して帝国で売っていると。それによる利益はかなりな物らしいがその関係が続くかどうかはエル・ファシルの繁栄に大きく影響する。レベロ議長が心配するのも無理はない。

「問題はないと思います。ヴァンフリートは一度帝国政府に渡しますが、改めて我々の所有が認められることになります。エル・ファシルにはこれからも我々の輸送船が立ち寄る事になるでしょう」
「そうか、それは良かった」

うむ、ヴァンフリートを一度帝国に渡すか。形式面でヴァンフリートは帝国領の一部であると表明するわけだな。胸を撫で下ろす奴も要るだろう。……それにしても妙だな、口調の割にレベロ議長はあまり嬉しそうではない。エル・ファシルの繁栄は何よりも気掛かりな事の筈だが……。レベロ議長が一口水を飲んだ。

「エル・ファシルとの話し合いは上手く行っているのですか?」
頭領が問い掛けると議長は顔を顰めた。
「難問ばかりだよ、エル・ファシル公爵領が発足すれば多くの同盟市民がエル・ファシルに移住を求め押し寄せるだろうが……、向こうは受け入れに難色を示している」
議長が溜息を吐いた。

「受け入れはどの程度可能なのです?」
「精々二百万程度だろうとエル・ファシルでは見ている」
「……」
「電気、水道などのライフラインの問題も有るが医療、教育などの施設も人も足りない。二百万以上は難しいだろうな……」

レベロ議長の声には力が無い。同盟には百億人以上の人間が居る、しかし受け入れられるのは二百万……。いっそ受け入れをゼロにした方が混乱はないだろう。
「戦争ばかりしているからです。国民の生活を犠牲にしたツケですよ」
「君の言う通りだ」
「……」
頭領もレベロ議長も苦い表情をしている。

「エル・ファシルでは受け入れは拒否すべきだと言う意見が出ている。混乱するだけで何の益も無いというんだ。彼らが心配しているのは自分達の繁栄だけだ」
吐き捨てる様な口調だ。なるほど、レベロ議長が不機嫌だった理由はそれか。議長はエル・ファシルの身勝手に怒っていたわけだ。

「彼らを責めることは出来ないでしょう。政府は戦争に夢中になって地方の事など何も考えてこなかったはずです。エル・ファシルは戦場になった事も有る。安全な所でぬくぬくしていたハイネセンの後始末を何故自分達に押し付けるのか……、当然の感情でしょう。繁栄が保障されているのであればエル・ファシル公爵領にも抵抗は少ないのではありませんか?」

レベロ議長の顔が歪んだ。
「その通りだ。同じような事を言われたよ。君は彼らと話したのか?」
「いいえ、そうでは有りません。ですが想像はつきます、難しい事じゃない。帝国の辺境が中央に対して似た様な感情を持っていますからね」

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