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少女1人>リリカルマジカル
第三十五話 少年期Q
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は何も言わずにいつも通りに振る舞った。いつもの様に笑っていた。

 聞けば相手を傷つけてしまうかもしれない。なにより聞いてどうにかなるのだろうか。そんな冷めた考えがよぎる。聞いて満足するのは、俺だけだ。話を聞いて、それで終わりじゃない。話を聞かせてもらった俺は、相手に何を返せる? 聞いて同情してやるだけ? 俺1人が聞いたところでその問題は解決するのか?

 言えば相手はすっきりするかもしれないという思いはある。だけど、むしろ逆に追い詰めてしまうだけの結果になる可能性もあった。……そんな賭けみたいな質問、できるわけがない。だけどこのままズルズルといることが、本当にいいことなのかもわからなかった。

『アル坊ってあれだろ。ネガティブなことをずっと考えていると、とことん悪い方に考えがいってしまうタイプだろ』

 店主さんにそんな感じで相談したら、帰ってきた第一声である。基本俺ポジティブなんだけど、と返すと人間波があって当然だと答えられた。変にない頭を使ってぐるぐる考えているから落ち込むんだ、と笑われる。なんだよ、エイカのこと俺の次に詳しいのはこの人だから相談したのに。

 店主さんは気にならないんですか? と不機嫌そうに俺が漏らした言葉。それに彼は一つ息をはくと、先ほどのニヤニヤした感じではない芯のおびた言葉を俺に返した。それが冒頭の言葉だった。


『アル坊が何をしたいのか。相手に何をしてあげたいのか。それは「聞く聞かない」だけが答えじゃないだろう。他にもできる方法はいっぱいあるはずだ』
『……いっぱい?』
『おう。今みたいに「誰かに相談する」というのも一つの方法だな。人間関係に二者択一の答えなんてものはない。自分で気づかないだけで、実は答えなんてものはいっぱいある』

 「俺今良いこと言った」と自慢げにあご髭をさすりながら言うから色々台無しだが、店主さんの言うとおり、確かに俺は視野が狭かったのかもしれない。

 エイカに話を聞くこと。だけど、これはそんなに大切なことなのだろうか。確かに大切なことだと思うけど、それは今じゃなければいけないのか。待つことは本当にできない?

 たぶん俺は、もしエイカから話を切り出されたのなら、迷わず聞くことができる。

『……エイカから話を待つことって逃げとかじゃないのかな。ずっと話してくれない可能性もあるし』
『ただ待つだけなら話してくれないかもしれないな。逃げにもなるかもしれない。だが―――』
『それならただ待つだけじゃない。踏み込んでくれるように、あいつにとって少しでも肩の荷が下りてくれるように一緒に頑張っていく……か』

 具体的な方法はまだ思いつかない。けれど焦っても仕方がないのはわかった。話してくれるのは、もしかしたら1ヶ月後かもしれない。1年後かもしれない。数十
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