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無明のささやき
第二章
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いないよ、お前と違ってこっちは忙しいんだ」
「それはそうだ。しかし、お前さんも苦労が絶えないな。どうするんだ、これから。」
「電話で言った通り、皆の就職の相談に乗る。それしかできない。」
「でも、200人だぜ。全員就職させようなんて思っているわけじゃないだろうが、はっきり言って、クズもいる。そんなクズは捨てることだ。」
「俺は自分に出来ることをするだけだ。それより、お前の就職先はどうなっているんだ。」
「俺のことは心配するな。三度目の就職だ、じっくり将来を見据えて決めるつもりだ。独禁法が改正されて、談合も以前ほど楽じゃない。その辺も見極めなくちゃならない。」
「そうらしいな。でも馬鹿げている。マスコミは知っていて書かないのか、それとも本当に知らないのか。常に俺たちゼネコンが槍玉にあがるが、談合やってるのはゼネコンだけじゃない。ありとあらゆる官庁発注の入札で談合は行われている。つまりすべての業界においてだ。」
「ああ、はじめに官製談合ありきだ。役人はOBのいる企業に優先的に仕事を回す。俺達は、役人がどの企業に受注させたいのか意向を確認し、それを業界に伝えた。意向がないとわかれば、さてどうするってことになる。それが談合の始まりだ。」
「ああ、今はやりのプロポーザル方式だって、役人が受注させたい企業を好き勝手に選べる仕組みにすぎない。まったく次から次と美味い方法を生み出すもんだ。」
「まったく、官僚っていうのは民間のあがりを掠めとるヤクザみたいなもんだ。中間で国の予算を掠め取るシステムが幾重にも張り巡らされている。」
「ヤクザだってコストは10パーセントを切れないって言うぜ。人件費や事務所経費をいれたら、恐喝だってそのくらいのコストは掛かる。官僚は下手をすればコストゼロで民間の上前を撥ねるんだからヤクザ以上ってことだ。」
「しかし、仕事が欲しければ官庁OBを雇うしかない。日本はやっぱり役人天国ってわけだ。」
「結局、俺達が就職に際し民間を選んだのは間違いってことかもしれない。そう思うことないか?」
「いや、違うと思う。あの当時、俺達は役人になろうなんて、これっぽっちも思わなかった。それだけ、世間を知らなかったってこともあるが、どう考えたって民間の方が刺激に満ちていた。今、こうしてリストラ寸前でいるのだって、考えてみれば刺激的だ。違うか?」
「それで、一年近くもここに居座っているわけか。」
「いや、そういうわけでもないんだ。はじめは長年世話になった先輩諸氏にご挨拶に立ち寄っただけだ。しかし、佐久間さんに会って、興味をそそられた。この会社に就職する前、佐久間さんとは何度も会って話した。その熱意にほだされ俺は転職を決心した経緯がある。佐久間さんを好きになったからだ。」
「ああ、俺も尊敬している。」
ここで、箕輪は苦虫を噛みつぶしたような
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