第一章
[2/7]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
認識されていない。しかし実際は銀行の介入によって退任に追い込まれたのである。そして、それを裏で画策したのが会長の娘婿だということは殆ど知られていない。
飯島は、この会長派として出世してきた人間だが、会長派閥の人間が失脚し、或いは辞めていくなか、それなりのポジションを得て順調に出世しており、飯島は内心そのことに矜持を抱くとともに、会社のために身を粉にして働いてきたのである。
突然の人事異動には会社の誰もが首を傾げた。皆の疑問は、何故、飯島が降格の対象になったのかという点にある。これまで飯島は東京支店長として着実にその地歩を固めつつあった。多くの支店が目標未達成のなか、東京支店だけは軽く目標をクリアしていたのだ。
飯島は最年少の支店長という重圧にも負けず、それを跳ね除ける実力も強運も持ち合わせていた。つまり、誰からも後ろ指刺されるはずのない人物なのである。しかし、東京支店長から資材物流センター長への異動は明らかに降格人事である。
社内の驚きとどよめきは、様々な憶測を生んだ。確かに一部に囁かれている通り、飯島がある任務で成功をおさめれば、次に華麗なポストが用意されていることも事実である。その任務とは、リストラ、つまり首切りであった。
しかし、何にでも表と裏があるように、この人事にも余人には計り知れぬ秘め事があった。それは、この異動の目的が飯島を追い落とすことであり、この人事を画策した人々は、飯島が職務を全うすることなど、少しも期待していないということである。
ここ関東資材物流センターに、全国から300人ものリストラ対象者が集められたのは今から3年ほど前である。異動は、本社を含め全国32ヶ所から、物流センター内にオフィスを置く子会社、滑ヨ東物流への出向という形が取られた。
年代は40代から50代の管理職が中心で、全国の支店長及び営業所長もその対象となった。最初の一年間で、異動と同時に退社した者を含め100名近くが会社を去ったが、それは飯島の前任者である竹内の強引なやり口が効を奏したと言われる。
竹内は、飯島の名古屋支店時代、副支店長で直属の上司だった人物である。飯島は苦労人の支店長には可愛がられたが、竹内とは肌合いの違いを感じて、最後まで親しくなることはなかった。その竹内が飯島の前任者なのである。
竹内が所長当時、特に目の敵にしたのは、滑ヨ東物流の運送部門に転籍された社員である。彼らに与えられた仕事は運転助手であり、元管理職がその屈辱に耐えるのは難しい。つまり、リストラ第一候補が集められていたのだ。
かといって、内勤の仕事も似たり寄ったりで、全国から集まる注文票をもとに、資材を集め配送に回す。一日が終われば、作業衣は汗と油でどろどろになる。会社の意図がどこにあるのか、分かりやすいといえば分かりやすい。
ある50代の元本
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ