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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:手品ともいう
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と巻いていく。先を尖らせた鉛筆のような形が出来上がり、コーデリアはそれを興味深げに覗き込んだ。

「くるくると巻きます。そうするとここに、二本端っこが出てきます。ここを引っ張ればハンカチが広がり、花びらはひらひらと地面に落ちてしまいます。そうですよね?」
「ええ。そうなるでしょう」
「では御覧下さい。あなたの目を、欺いてみせましょう」

 そう言うと慧卓は、その指定した部分を両手でそれぞれ持つ。そして一瞬溜めを置いた後、見せつけるようにばっと勢いよく開く。

「はい!どうです!花びらは出てきません!」
「・・・ケイタクさん」
「はい!」
「透けて見えます」
「えっ!?」

 慧卓は驚いてハンカチを見て、そして閉口した。本来ならばハンカチは全て広がらず、物を包み隠せそうな皺が上部に出来上がり、その内側に花びらが隠れる筈なのだ。実際その通りとなっているのだが、花弁の鮮やかな色彩が純白のハンカチを透けて顕となっている。まるで白の上着から透けて見える下着のような格好でり、滑稽な姿である。
 色の濃いハンカチでやればよかったという冷静な突っ込みが内心から湧き上がってきた。慧卓は今度こそ羞恥心を表情に出して口元を歪めた。

「・・・うわっ、何て恥ずかしい・・・」
「・・・ぷっ、くくく・・・」
「い、いや、あの。今のは間違いです!うまくいけば隠せるんです!いや、本当に!俺が覚えた頃は、これで硬貨とか、親父のへそくりとか隠してやりましたよ!?その後見つかってしこたま尻を叩かれましたけど、でも上手くいったんです!」
「わ、わかりました、分かりましたから・・・ぷぷ、だっさい・・・」
「うぐぅ・・・」

 口元に手を当てた上品な所作で、コーデリアは毀れる笑いを堪えようと目を瞑っていた。しかし完全には抑えきれぬようで頬が変に吊り上がり、目元もすっかりと緩んでしまっていた。その開花した花のような可憐な表情に、慧卓は突っ込む気も無くし、観念するかのように微笑を浮かべた。王族といえど年頃の女性に相違無いという安堵を覚えると同時に、その完成を間近とさせた奥ゆかしくも桜花繚乱とされた笑みは、年頃の男性たる慧卓の心を大きく揺さぶった。彼の第二の故郷である勤木に残した恋人の存在を、一時忘れさせるかのような魅惑の表情であった。
 どうやら一頻り笑いに耐えたらしいコーデリアは、ふぅと一息つくと慧卓に向かって言う。それを見て慧卓も己の邪念を振り払った。

「でも面白かったですよ。有難うございます、ケイタクさん」
「どういたしましてです、王女様。王女様も何かやってみませんか?こう、手品とか」
「いえいえ、私はそれよりもやらなければならない大事な事が、沢山ありますので」
「だからこそです。息抜きにやれば、それはそれで楽しいですって!誰かを喜ばせたり
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