暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:手品ともいう
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で御座います、アリッサ様」
「うむ、見事な心意気ぞ。もうよい、下がれ」
「ははっ!よし、もうこれ絶対洗わないぞ」「おい、俺にも嗅がせよ。・・・うわぁぁ・・・さいっこう」

 汗を吸っているであろう白い手拭に鼻をくんくんとさせながら、二人の駄目な男は恍惚とした表情で立ち去っていく。背筋がぶるりと震えているのが印象的であり、慧卓は得も言われぬ気持ち悪さを二人に感じていた。
 精魂込めて作ったというバッジをあっさりと女性の体臭がするであろう手拭と交換した二人も二人だが、あろうことか王族の女性が使用された手拭を渡して獲得したバッジをホクホク顔で胸元に仕舞うアリッサもアリッサであった。五十歩百歩の性癖である。

「変態だらけじゃないか」
「・・・誰にも言うなよ、ケイタク殿」「言わない代わりに、何か見返りとか欲しいですね」
「お、おい。案外がめついな」「流石に、汗を取った手拭ってのは無いでしょ。下着泥棒みたいで吃驚しました」
「下着を盗るとはありえないな。普段から考えてないと出てこない、汚らしい発想だぞ。ケイタク殿」
(なんで俺の方が引かれんだよ、理不尽だろ)
「それでだ、互いの趣向が露わとなってしまったが、此処は一つ、御互いこの事を黙っているのが賢い選択だと思わないか?異世界で全うな教育を受けたのであるなら、それが正しいとすぐに分かる筈だ」
「言われるまでも無いですよ。でもです、それはあくまで『趣向について黙る』って話ですよ?『手拭を盗んだ』事まで黙るのは、流石に出来ませんよ。それって如何に騎士であろうとやっちゃいけない筈なんじゃ?」
「心配するな。あれは私の私物だ。コーデリア様が使用されたというのも、実は嘘だ」
「は?」
「今朝、目ヤニを取った時に使ったくらいで、無くなってもどうでもいいものなのだよ、あれはな」

 何とも言えぬ面持ちとなって、慧卓は他所を向いた。あまり芳しくない反応を見てアリッサは苦笑を浮かべた。

「どうしても黙ってられないというのなら、特別に『見返り』を君に与えよう。こっちに来てくれ」

 そう言ってアリッサは、木陰から天幕が集う自陣へと向かっていく。慧卓は彼女が立ち去っても寝転んだままであったが、見返りとやらが何かを確かめたくなり、すっと立ち上がって彼女の背中を追い掛けていった。
 平野に陣を敷いた王国軍は、今まさに朝食の真っ最中であった。ずらりと整然として立ち並ぶ天幕の間から人々の朝の支度の音が鳴り響いている。鍋を温める炊事の火が彼方此方で炊かれ、もくもくと白煙を空に立ち上らせており、物資を運ぶ馬も今は糧食をむしゃむしゃと頬張って、樫の黄色い花を描いた軍旗は穏やかな風に乗ってはためいていた。
 アリッサは自らが眠る天幕の近くまで行くと、傍の木樽の上に置かれてある一本の剣を取り、手元で鮮やかにそ
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