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王道を走れば:幻想にて
第一章、その4:盗賊の砦  
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うに巡回しているのならば、必ず別の入り口に差し掛かる時が来る。其処まで辿り着いてしまえば、後は別の巡回者の視界に入らぬよう気をつければ大丈夫だ。そう己に言い聞かせて慧卓は柱の影より顔を覗かせて二人の巡回の位置を確認する。一方は遠く離れ、一方は壁際を歩いて近付いてくる。後者の姿が柱の陰に隠れた瞬間、再び慧卓は走り出して壁際を走り、別の柱の陰に身を潜めた。
 巡回の賊の位置を確かめ、走り出し、柱に隠れる。慧卓はこれを幾度も繰り返し、漸く広間の出口へと近付く。巡回の者は幸運にも一度も此方に気付いていない。在り得ぬほどの幸運を自覚しながらも、慧卓は腰を屈めながら足早に移動し、遂に広間の出口へと姿を消していった。
 普通ならば其処で大きく息を吐いて安心するのだが、彼はそれで留まらない。ここぞとばかりに慧卓は走っていき、間近の通路へと直ぐに顔を覗かせた。其処に誰もいない事を確かめてから、彼は上方、洞窟の出口へと向かっていく。

「はぁっ、はっ、はあっ、はあっ、はぁっ」

 荒い息が彼の胸を締め付け、緊張のあまり心臓がやかに煩く高鳴っているのを感じさせた。慧卓は折り返すように続く坂を一つ、二つ登ると、人の気配が無い事を確かめてから間近の扉の中へと滑り込んだ。其処で彼は今度こそ深い息を漏らし、扉に後頭部を付けて安堵の念を抱いた。
 彼が入っていった部屋の中には、幾つもの木箱が所狭しと積み重なっており、壁には棚が打ち付けられている。木箱の中には使い古されて捨てられたのであろうボロ服が覗いていたり、腐敗して用を無くした野菜が散乱したり、そして部分部分が壊れたジョッキやスプーンが放られていた。棚の上には薬瓶が幾つか乗っているが、何れも中身が空である。酒臭い事から、本来の使用用途を無視した事は間違い無さそうだ。
 慧卓は荒くなった息を狭苦しい部屋の中で整え、自分に改めて克を入れた。

「よし、いく「おい、聞いたか?」って!?!?」

 扉の向こう側より聞こえた声に心臓をどきりと鳴らし、慌てて慧卓は己の口を塞いだ。扉越しに、二人組みの男の声が聞こえてくる。かつかつと靴が鳴らされる音が、ほんの直ぐ傍まで聞こえて来た。

「頭が連れ込んだあの騎士、実は超お偉い人なんだとさ」
「本当か?毎日上手い飯食える人なのか?」
「偉い=上手い飯って変換するんじゃない。でさ、あの騎士って自分をアリッサ=クウィスって名乗ってただろ?クウィスってのは今の王国の成立に貢献したクウィス男爵の事なんじゃないかって、皆噂してあの人の顔を拝もうとしてるぜ」
「うっほ!!凄い人が来たもんだな!!」
(アリッサさんってそんな凄かったのか。俺タメ口きいちゃったよ)

 慧卓は余裕を抱こうと、無理矢理に下手糞な冗談を胸中に零す。扉越しの声は足音と共に徐々に遠ざかっていく。

「で
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