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王道を走れば:幻想にて
第一章、その4:盗賊の砦  
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 慧卓は自分の世界にて過去に絶大な人気を誇ったステルスゲーム、その主人公の精悍な風貌を思い浮かべ、意を決して足を進ませた。
 息を飲み込んで慧卓は足を進ませていき、賊が消えて行った曲がり角まで差し掛かる。其処からちらりと顔を覗かせれば、大きく刳り貫かれたように広間が広がっていた。広間全体に鉄色の暗い空気が立ち込めており、視界が利き難い事は明らかである。まるで支柱のように天然の岩柱が幾本も聳え立ち、柱の根元には小さな茸が生えている。時折、広間の天上から水滴が零れ落ちており、ぽつぽつと水溜りを撥ねさせていた。。空間の中を照らすように松明の炎が炊かれているが、その炎は動き回っている。即ち、見張りの者がいるという事である。
 その広間にて視認出来る限り、三人の者が巡回をしていた。一人は先程広間に入っていった者であり、直ぐに別の入り口へと姿を消していった。後の二人は退屈そうな様子を呈しながら、円を描くように広間を歩いている。その巡回ルートを確かめるように、慧卓は目を凝らして彼らの動きを観察した。

(やり方・・・巡回ルートを見極め、気配を絶ち、賊の死角へと移動する!・・・いやっ、気配絶つなんて無理だけど、足音は出来るだけ立てないようにする!)

 彼の中で危機感と緊張は徐々に高まりを増し、不安が彼の心を苛み始めていった。地下牢を脱出して外に出たところで、本当に自らが助かるかは分からない。もしかしたら途中で賊徒に捕縛され、彼らの腰に吊るされた鉄剣により斬首の刑に処させる事もあるかもしれない。アリッサ達の方でトラブルが発生して、結果として脱出自体が不可能に終わるのかもしれない。漠然とした不安が不安を呼び、彼の理性を奪うように胸中に広がる。己がきりっと立たせている足に至っては、緊張で膝が少し笑っている。
 だが慧卓は決して賊から視線を逸らさない。身体に怯えが走っても、決してその場で蹲ろうとはしなかった。

(逃げたりはしない・・・熊美さんが頑張ってる中で、俺だけが怯えて身を竦ませるなんてっ!!!)

 咥内に溜まった唾を飲み込んで慧卓は僅かながらも勇気で、己の理性を必死に繋ぎとめようとする。足の震えは収まらないが、それでも少しばかりの走駆くらいならば耐えられそうだ。
 巡回の者が此方より視線を外した瞬間、慧卓は一気に身を乗り出して慎重に、しかし大胆さを兼ね合わせて疾駆していく。足音を無闇に立たせぬよう腰を屈ませて走り、直ぐに柱の陰へと己を隠す。際どいタイミングとはいえないが、それでも巡回の視線が何処を走っているか定かで無い以上、余計に心臓に負担を掛けるものであった。嫌な汗が背中を濡らし、掌に感じる柱の冷たさを感じて身体の熱を一気に自覚していく。口から毀れる荒い吐息が、薄暗闇の中に混ざり溶けていった。
 円形状となっている広間にて円を描くよ
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