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王道を走れば:幻想にて
第一章、その4:盗賊の砦  
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かしたら賊共の手が、王女様の思い出深い教会に及ぶ可能性がある。だから壊されぬうちに、思い出の品々を取り戻しに来たんですね?」
「あぁ、当に其の通りだよ。そして私は王国に忠を成す近衛騎士だ。あの方の護衛として遥遥教会まで行き、無事に品々を手にはしたのだが、結果として周囲を蔓延っていた賊に勘付かれた。そして、こうなった訳だ。幸運にも殿下は逃がせており、兵達に要らぬ動揺は与えていない筈だが。
 ・・・貴方達には本当に詰まらない事に巻き込んでしまったと思っている。どうか、お許し下され」

 アリッサが居住まいを正し、深く頭を下げる。複雑な厄介事に無関係な者を巻き込んでしまったという慙愧の念が胸中をもやもやと覆っていき、彼女の表情を曇らせていく。そんな彼女を安心させるように、慧卓は和やかな笑みを浮かべて言葉を掛けた。

「もう大丈夫ですって、俺達も乗りかかった船に乗っかっただけです。それに、此処まで来たら一蓮托生ですよ!一緒にその賊徒共の鼻を叩きのめして、王女様に笑顔で拝謁しに行きましょうよ!!ですよねっ、熊美さん!!」
「まっ、そうね。態々本拠地に招き入れてくれたんだしね。ここは彼らを、吃驚させてあげましょう」

 アリッサは頭を上げ、危機を遇して尚溌剌とした態度を崩さぬ慧卓と、不敵な微笑を湛える熊美を見る。この事態を招いた張本人ともいえる己を咎め、責められると思っていただけに、二人の態度に驚きを隠せないでいた。だが段々と彼女の胸中に安心感が芽生え、油断ならぬ状況に余裕を崩さぬ二人に対して信頼感を抱いていく。

「・・・有難う、二人とも」

 アリッサは柔らかな笑みを浮かべて二人に言葉を述べた。それを慧卓と熊美が微笑で以って応えた。 
 其の時、地下牢の扉が音を立てて開き、冷ややかな風が流れ込んできた。先の猪面の中年の男に続いて、他の者と一線を画す雰囲気を漂わせる、筋骨隆々の大男が現れた。浅黒く焼けた肌の彼方此方には剥き出しの刃傷の痕が残り、鼻は丸く潰れている。だが瞳は真ん丸としており、何処か純粋さが残っているようにも見えた。だが其処から出る愛敬など、大男の逞しい巨体と汚れ煤けた革鎧の前には意味なきものと成り果てている。

「お頭、この女です」
「・・・女、背中を向け」

 頭、即ちこの男が『鉄斧のカルタス』なのであろう。漸くの登場である。その言葉に渋々と従って、アリッサが背に纏うマントを見せ付ける。それに描かれた美麗な樫の花をじっくりと眺めてカルタスは言う。

「・・・間違いねぇ。『樫のマント』だ。こいつぁ驚きもんだな?王国の威厳を担い、そして臣民の期待と羨望を一身に集める最高峰の騎士様と、こんな薄暗い地下牢で御面会できる名誉に預かるとは」
「ふん、薄汚い賊風情め。この私が貴様らの陰惨な手に屈すると思うか?早々に牢から出
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