第一章、その4:盗賊の砦
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は二週ほど遡る」
アリッサは壁に寄り掛かり、一つ間を置いた後に話し始めた。
「とある村の近くで山賊の棟梁が貴族らしき風体の者と面会をしていたと、偶然通りがかった商人の報せを受けて警備衛兵らがその村に駆けつけたのだ」
慧卓は床に腰を落として静聴の態勢をとり、熊美は牢屋の鉄格子の近くにて彼女の話を聞く。
「商人から良く聞くと、貴族の風貌は良く分からず仕舞いであったが山賊は分かった。『鉄斧のカルタス』、その人だったのだ」
「・・・異名持ちねぇ?もしかして、手配書も出回っていたりするのかしら?」
「ご賢察の通りです。『鉄斧のカルタス』、王国重要指名手配書にて頸に多額の懸賞金も掛けられている凶悪な山賊だ。『集団略奪罪』・『放火罪』・『殺人罪』・『結婚詐欺罪』」
「え?」
「結婚詐欺」
疑問の声に律儀に答え、アリッサは更に続けた。
「彼奴めは貴族から何かを大量に受け取って、己の砦に運び込んだらしい。それを急ぎ斥候を放って確認させたところ、大量の火薬だという事が判明した」
「火薬?物騒な響きね」
「同時に、大量の鉄と硫黄が運び込まれるのが発見された。あくまで推測だが、奴はこれで大量の手榴弾を作るつもりなのだろう」
「手榴弾って・・・これは日本でいう『てつはう』って事でしょうか?」
「貴方にはそれが分かり易いでしょうね。本来ならば球状の土器か陶器の中に、鉄片や青銅片と火薬・硫黄を詰める。それを点火して地面に向かって投げつければ、相応の爆発が大音量と共に発生し、中の破片が周囲に吹き飛ぶ」
「其の通りです。我が王国でも、一部の工兵が正式採用している武器です。同時に一般人、ましてや賊徒が手にするには余りに危険な武器であり、一介の警備衛兵には手が余る事態でした。そこで急遽私を含めた国軍の兵隊が村に派遣されたのです。当初我らは折を見て、山間に位置する山賊の砦を奇襲する筈でした」
アリッサは其処で話を一度止めて、首を横に振る。その頸振りには、一部の諦観が混ざっているようにも見えた。
「しかし思わぬ事態が発生したのです。派遣されてきた兵士らの中に、高貴な御方がこっそりと忍び込んでいたのです」
「?敵方の?」
「違う、我らのだ。・・・グスタフ=マイン王国第三王女、コーデリア=マイン王女殿下」
「はいぃ!?!?」
「何故そのような方が屈強な兵士の中に混ざっていたのかしら?」
「・・・恥ずかしながらあの方の私情によるもので」
王女の尊厳を傷つけぬように言葉を選びながらも、アリッサは話を続けて行く。
「賊徒共らが篭る砦の近くに、小さな教会があります。私達が居た場所ですね。あそこは嘗て、殿下が礼拝と修行を重ねられた思い出のある場所なのです」
「・・・読めてきましたよ。賊共と一戦交えるとしたら、もし
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