第5章 契約
第68話 再び夢の世界へ
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と子供たちの髪の毛の色や、炎の精霊の存在。そして、突如、室内に侵入した俺を無視するかのような。いや、まったく視界に入っていないかのような態度などに奇妙な違和感の如き物を覚えますが、それでも、この一場面は間違いなく冬の夜の家族団欒の様子。
問題は、あの母親らしい女性と、長い髪の毛の十歳前後の少女の、どちらがタバサか判らない事。
何故ならば……。
多分、勝負が着いたのであろう。長い蒼の髪の毛を持つ少女が、嬉しそうに少年に何かを話し掛けた。
その表情に、彼女に相応しい満面の笑みを浮かべて。
そして、その様子を見つめる女性の表情も微笑みを浮かべていた。これは、幸せに満ちた、と表現すべき表情。
そう。この世界にやって来てから、一度も彼女本人が浮かべる微笑みと言う物を見た事がない俺に取っては、非常に眩しい物と思える笑顔をこの夢の世界では常に浮かべて居る。
この夢が、タバサの未来への憧れを示す物なのか、
それとも、まったく違う何かを示す物なのか、今の俺には判らなかったのですから……。
そして……。
そして、彼女らの笑顔を共に、この夢の空間は泡沫夢幻の例えの如く、儚くも消え去って行った。
俺の前には、先ほど開いたはずの扉が閉じた状態で立ち塞がる。
但し、今回の扉は白。
その白き扉を押し開く俺。
その重い扉の先には……。
先ほどとは違う、暗い室内。そして冷たい空気。
部屋は……。窓から覗く蒼の女神。豪華な天蓋付きの寝台に、部屋の一方の壁を占拠する本棚と、その中に並べられる本、本、本。
そして、その寝台の上に、うずくまるように膝を抱えた、蒼い長い髪の毛の少女の姿。
彼女の浮かべる表情は無。先ほど、蒼髪の少年や、その他の家族たちと共に過ごしていた時の表情とはまったく別人の表情。
しかし、容貌自体は俺の良く知って居る少女に良く似た面差し。
そう。この寝室は、オルレアン屋敷のタバサの寝室。窓の外に見える景色も、そして、部屋に存在している調度や家具、そのすべてが同じ物。
おそらく、本棚に並べられた本一冊に及ぶまで同じ物が並んでいるのでしょう。
但し、雰囲気が違う。
その少女から感じるのは、かなり強い陰の気。
先ほど、チェスに興じて居た少女が発して居た、幸せそのものの雰囲気とは違うのはもちろんの事、俺がこの四月から共に暮らして来た少女が発する物とも違う。
更に、タバサの部屋及び、オルレアン屋敷自体が発して居る雰囲気が違う。
全体的に陰。今、寝台の上で膝を抱えた状態で虚ろな瞳で何処かを見つめて居るタバサが発して居る気に相応しい陰にして滅な雰囲気に沈んでいた。
その刹那。
ただ、膝を抱え、何処か
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