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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第68話 再び夢の世界へ
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力を発動する。

 呪文を使用せずに目を瞑り、この世界……。タバサの夢の世界全体に意識を繋ぐ。
 これは、あの蒼き静寂の世界。俺の親分と自称する少女と出会い、奇形の王アトゥと戦った世界で行った深度を下げて行く作業などではなく、自らの意識を広げて行く作業。

 俺とタバサの間に繋がれた因果の糸()が存在するのなら、これは難しい作業では有りませんから。

 そもそも、ここはタバサの夢の世界。俺が、俺自身の身体だと思って居るモノも、それはあくまでも自分の意識が、完全にタバサの意識と混じり合って仕舞う事を防ぐ意味から纏って居る防具に過ぎないモノ。
 これは、俺がここ(夢の世界)に存在する為に、俺自身が意識を投影している影に過ぎない存在です。

 そんな曖昧な夢が支配する世界で有るのならば、通常の理が支配する現実世界では雑多な気が邪魔をして、非常に困難な作業となる遠く離れた相手の気を探る事も可能となる。
 いや、可能と成ると思い込む事で成功しますから。

 目的は現在のタバサの居場所。そして、出来る事ならば今の彼女の状態が知りたい。

 イメージするのは、普段の彼女の姿。
 平均的な十五歳の少女からすると、やや小さめな身体。蒼い髪の毛、蒼い瞳。
 自らの身長よりも大きな魔術師の杖を持ち、魔術師の証の黒のマントを五芒星のタイピンで止める。
 整った顔立ち。但し、未だ成長過程で有る事の証明。容貌には完成される前の曖昧な部分が残されて居り、
 その立ち姿からは、凛とした雰囲気が漂う。

 世界と同化し、この夢の世界すべてに満ち溢れている彼女の気配の中で、もっとも大きい物を掴み取る作業。

 ………………。
 …………。

 僅かな空白。その後、瞳を開け、有る方向を見つめる俺。
 ここが夢の世界で有る以上、現実界の理に支配されない空間の可能性も高いのですが、それでも、蒼茫と暮れて行こうとしている夕陽に正対した時の左側やや後方。
 周囲に満ちる冷たい大気から推測すると季節は冬。そこから考えると、この方向はほぼ南で決まり。

 そして……。
 そして、自らの影を左前方に捉えながら、ゆっくりと彼女を感じた方向に歩を進め始めたのでした。


☆★☆★☆


 夕陽に紅く染め上げられた、本来は白い壁を持つ御屋敷を見上げる俺。
 周囲には、広い庭。季節に相応しくない色鮮やかな花が咲き乱れる花壇。そして、噴水。
 その真ん中を真っ直ぐに貫き、御屋敷の中心に存在する入り口へと到達する道。

 但し、その俺が目の前にしている屋敷は、何度か俺が見た事が有るオルレアン屋敷などではなく、俺が見つめる先に存在するその屋敷の持ち主を表現する紋章も、オルレアン家を表現する蒼き盾に白いレイブルと三本のアヤメを象った物など
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