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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第68話 再び夢の世界へ
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方が無難でしょう。

「わたしは同行する事は出来ない。彼女の意識の深層にわたしが過度の干渉を行うと、何が起きるのか不明」

 湖の乙女が、俺の傍らに眠る蒼き吸血姫をそのメガネ越しの瞳に映しながらそう言った。

 そう。いくら、俺が鈍いと言ってもこの言葉の意味も理解出来ます。彼女を……湖の乙女をタバサの夢の世界。それも、心の深奥に連れて行く事が出来る訳は有りません。

 これから出向く場所。其処は彼女(タバサ)の心の一番奥。そんな部分に囚われた自分を助けに来るのが俺だけならば問題はないでしょう。しかし、其処に、自分から俺を奪い去る可能性が有る少女を連れて行く事は……。
 どんな結果を招くか。返って事態を悪化させる可能性も有ると思います。

 タバサも人間で、当然のように独占欲やその他を持って居るのは間違いないのですから。

「大丈夫。タバサを連れ戻すのは俺の望み。そんな事に、オマエさんの手をこれ以上煩わせる訳には行かない。
 俺を、タバサの夢の世界に送り込んで貰えるだけで充分や」

 彼女を心配させない為の台詞を口にする俺。それに、俺は以前、ショゴスに捕らえられ掛けた時にタバサに救われた経緯が有ります。
 今度は俺が夢の世界に侵入して、タバサを救い出す番ですから。

 そして、この部屋に入って来てから初めて、自らの傍らに立つ少女へと向き直った。

 初めからずっとそうだったのか。それとも、今、俺が彼女へと向き直った瞬間に、同じように俺へと視線を移したのか。
 俺と、彼女の視線が交わったその瞬間に彼女は小さく首肯いた。
 但し、ふたりの視線が絡み合った瞬間、彼女の涼やかなる瞳が一瞬揺れたような気がした。

 そして……。
 そして、彼女(湖の乙女)を中心とした世界が、淡い光の中に沈んで行った。


☆★☆★☆


 遙か遠くに沈み行く紅き太陽。
 やや弱々しい夕陽に、少し冷たい……。そして、物悲しい紅に染まった風景……。

 何度訪れたとしても変わらないイメージ。
 そう。記憶の彼方に存在するような、何処かで見た事が有る道。
 懐かしい思い出を喚起するかのような、何処かで見た事が有る街並み。

 紅く染め上げられた酷く虚ろな空間(世界)の中心に、ぽつんと一人残された俺。

 前後左右。どちらを見ても、見た事が有るような曖昧な街並みが続く、紅と言う単一の色彩が造り上げた寂寥感に満ちた世界。
 妙に別れを想像させるこの街の雰囲気と景色が、俺を不安にさせる。

 いや、この紅い色が、十字架に掲げられた救世主の流した血液を想像させるのかも知れない。

 しかし、この世界に関しては二度目。ならば迷う事もない。更に、この世界と俺は、既に繋がっている。
 そう考え、自らの探知能
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