第5章 契約
第68話 再び夢の世界へ
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流石に限度が有る。
もし、このまま疫鬼の数が増え続けて行けば、何時かはその強化に綻びが発生し、戦場自体を破壊する時が来る事も……。
しかし! そんな弱気が心の中に発生したのも、正に一瞬。
右脚で床を蹴り、大きく腕を振り上げた疫鬼の懐に入り込み逆袈裟斬りの形で斬り伏せて仕舞う。
そう。清き光りがひとつ閃く度に、床に黒き染みを作り上げられて行くのだ。俺を捕らえようと伸ばした腕が斬り跳ばされ、隅に追い詰めようと踏み出した亡者の足が前に出される前に身体が二分される。
そして、次の瞬間には、元の黒き染みとなって、何処か遠くの世界に還って行く。
その瞬間、二体目の剪紙鬼兵が一体の疫鬼と相殺された。
後、残り一体の剪紙鬼兵。そして、最初は部屋を埋め尽くすほど存在していた疫鬼たちも、残り――――
今、一体を屠り、残り三体。
左肩から脇腹に抜けた蒼銀の閃きに続いて、黒い何かを噴き上げる疫鬼。その黒い体液にも似た何かが俺を穢して行くが、しかし、それも直ぐに消える。
その勢いのまま左脚を軸にして半回転。俺の右脇をすり抜けようとした疫鬼の背中を、下段から斬り上げた一閃。
残りは一体!
その瞬間、背中に触れた感触が全身に怖気を走らせた。
そう。それはまるで、瞬間的に身体から大切な何かを奪われたかのような、悪寒と吐き気をもたらせる異常な感覚。
しかし、それまで。自らを護る為に施した形代が黒く変色して行くのを感じながら、右手に握った七星の宝刀を逆手に持ち直し、左脇の下を通して……。
そうして……。
そうして、次の瞬間。
未だ寝台の上で眠り続ける眠り姫の寝室は、元通り、秋の長い夜に相応しい静寂を取り戻していたのだった。
☆★☆★☆
明けて翌朝。十月、 第二週、オセルの曜日。
いや、今日に関しては別の呼び名が有りましたか。このハルケギニア世界に召喚されてからコッチ、この日にはかなりの確率で厄介な事件が起きるふたつの月が重なる夜。
スヴェルの夜、と呼ばれている呼び名が。
「結局、タバサは今朝も目覚めずか」
昨夜の戦いがまるで嘘のような清々しい朝を迎えたオルレアン屋敷。しかし、その屋敷の正式な主人は眠り姫状態。未だ目覚める兆候はなし。
そして、この屋敷に雇われている使用人の類は、昨日の段階ですべて一時的な暇を出して故郷の方に帰らせています。
結局、昨日、この屋敷に辿り着いてからタバサの様子を見た後、タバサの母親の状態を調べた結果は……。
そして、その結果から、昨夜、疫鬼による襲撃を予想した上で、この屋敷の彼方此方にタバサを象った形代と、その護りの存在を配置して有ったのですが、結局はより因果の糸の強
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