暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第68話 再び夢の世界へ
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級品で有る事が窺える部屋。

 その部屋の中心で、何やら罵り合う二人の男女。

 一人は金髪碧眼の女性。
 もう一人は、蒼い髪の毛、蒼い瞳の男性。

 男性に関して見覚えは有りません。しかし、女性に関しては、俺の知って居る顔でした。

 俺が知って居るのは、現在、無声映画の中で、声を荒げて何かを叫んでいる女性よりは幾分年齢を重ねた女性。故オルレアン大公夫人。つまり、タバサの母親その人。
 そして、その女性と同じ寝室に居て、更に、蒼髪、蒼い瞳の男性と言う事は、この男性は……。

「オルレアン大公。つまり、タバサの父親……」

 自然と、ため息を発するような雰囲気で言葉を漏らす俺。
 もっとも、これが夢の世界で有る以上、この目の前で繰り広げられている映像が実際に起きた出来事で有る可能性も有る、……と言う程度の内容なのですが。

 そして、今一人の登場人物。この部屋……。夫婦の寝室の扉の向こう側で膝を抱えたままうずくまる蒼い髪の毛の少女の姿が、俺の瞳には、何故かはっきりと映っていた。

 いや、この哀しい夢はタバサの見ている悪夢ではない。おそらく、もう一人の少女の見て居る夢。
 もうひとつの楽しい夢は……。

 再び、少女の頬を伝う一滴の煌めきを確認出来た瞬間、この悪夢に等しい世界は消えて行ったのでした。


☆★☆★☆


 何時の間にか暗い、殺風景な部屋の中心にポツンとひとつだけ設えられた一人掛け用の椅子に腰を下ろしている俺。
 酷く疲れたようで有り、そして、何か非常に空しい気分に囚われて居た。

 そう。先ほど見せられた映像。あれは夢。どちらも、誰かが。もしくは、俺自身が見た夢だと切って捨てる事は出来る程度の物。

 しかし……。
 しかし、世界。……平行世界とは無限の可能性が有る。

 もしかすると、先ほど見せられた夢は、その可能性のひとつ。この俺が現在、暮らしているハルケギニア世界の過去に起きた、或いは未来に起きる出来事ではなくとも、何処か別の世界では起こり得た事実なのかも知れない。

 但し、ならば何故、そんな物を俺に見せた?

 そして、五つ目の扉が、椅子に腰かけた俺の正面に顕われた。
 何の前触れもなく。そして、何の音も発する事もなく。

 その扉の色は黄色。

 水の属性を持つタバサを捕らえて離さないのは、おそらくこの扉。水をせき止めて、流れ出す事を防ぐ、土の属性を指し示す扉。
 更に、この扉の向こう側には……。

 ゆっくりと、疲れた身体に鞭を打つかのように立ち上がり、扉の前まで歩を進める俺。
 そして、その扉のノブを握り……。


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