暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
黒守黎慈の変化
[1/8]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「……はぁ……っつ」

 身体の異様な火照りと気怠さで目が覚めた。窓から差し込む日差しは朝であることを告げている。

 時計を見れば針は七時を指していた……いつもより少し遅い起床。
 身体に活を入れるため、起き上がろうとしたその時──────

「ん……ッ!? っつ……ッ!」

 活どころの話ではない痛みが肩に走る……昨日のライダーとの戦いで、見事な風穴を開けられたところだ。
 魔術刻印による強制治癒とフェンサーによる再生魔術の効力で、外見だけならもう塞がっているが、内側はまだ治りきっていない。

 身を蝕む熱さに思わず額、頬、首へと手のひらを当ててみる。
 熱に浮かされたような茫とした意識のまま、外と内の体調確認を行う。

 どうやらこの火照りと気怠さは幻肢痛のようなものらしい。

 今感じている微熱は魔術による治癒力の強化、細胞の活性によって新陳代謝が上がっているから。
 魔術刻印と再生魔術の働きによって身体中、魔術回路を駆け巡る魔力が発している架空熱も体内に蓄積している。

「はぁ……っ……今んとこ4割ってとこか」

 魔力の回復量と肉体治癒に使用されている魔力比は大体7:3くらいか。
 本来なら魔力だけであれば三日も魔力消費を切れば完全回復だが、今回は肉体の損傷が激しくそちらで多少消耗している。
 併せてライダー相手に宝具を連発したフェンサーの回復補助の為、平常時よりも多く供給を行っていることで自分の回復は後回し気味だ。



 "補助"と称したのは、俺の魔力を幾らか回したところで回復量への影響は微々たるものだからだ。
 サーヴァントの魔力回復量は基本的に自身の残存魔力量に依存する。数式的に表すなら、残存魔力量×基礎回復値=魔力回復量といったところか。

 つまりサーヴァント自身に残されている魔力が多ければ多いほど回復量も増し、少なければ少ないほど回復量は落ちていく。
 少しでもフェンサー自身の残存魔力の数値を上げるために多量供給しているが、フェンサー自身の魔力総量自体が破格な為、俺からの供給量など微々たるものだ。

 俺もフェンサーも完全回復には日を要するが、それでも2日ほどしっかりと休めば戦闘行動は可能な程度には身体も魔力も回復する。



 肩はともかくとして、身体の調子を確かめながら起き上がる。

 ライダーの蹴りをまともに受け止めた両腕は、骨折寸前と言っていい損傷だった。
 下手に衝撃が加わったり無理な圧迫が掛かれば、罅が入るかそのまま骨折まで達しかねないほど。

 いわゆる不全骨折。

 表面的には変化や異常は見られないが、蓄積されたダメージや負荷によって外面的に損傷する寸前のようなもの。
 昨日は強化や硬化を掛けていたおかげで普通に戦えていたが、
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ