第百三十話 南蛮具足その十
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「よいのじゃ」
「右大臣殿を助けられるべきと」
「むしろ」
「西瓜は甘く中身がしっかりしておれば大きければ大きい程よいであろう」
「確かに、中身がよい西瓜なら」
「大きいに限ります」
それは彼等も言う。
「そして織田家はそうした西瓜だからですか」
「今は」
「そうじゃ、越前に他の国に」
朝倉攻めから先のことも見据えている言葉だった。
「天下の大抵を飲み込んだ時でよかろう」
「そこで右大臣殿の将星が落ちるでしょうか」
「落ちぬ星はない」
人間五十年と同じ様な言葉だった。
「決してな」
「しかしその時に落ちるでしょうか」
「星は最も大きくなった時に落ちるものじゃ」
家臣の言葉にまた返した。
「その時にな」
「では天下を抑えた時に」
「その時にこそ」
「殿の将星は落ちるであろう、その時にじゃな」
動くのかというと、松永はこんな言葉を出した。
「まあ気が向けばじゃな」
「あの、まさかその時も動かれぬのですか?」
「もしや」
「ははは、まあわしも闇の一族じゃ」
笑っているがその笑みは何かが違っていた。
「動く時は動くわ」
「若しその時に動かれぬと」
家臣達の言葉は明らかに危惧するものだった。
「そうなのですな」
「そうじゃ、それにわしはな」
またしても思わせぶりな笑みを浮かべる、そして言う言葉は。
「殿が嫌いではない」
「いえ、それは嘘でしょう」
「幾ら何でも」
周りの誰もが松永の今の言葉は信じなかった、そのうえでこぞって彼にこう言った。
「我等にとってあの御仁は不倶戴天の敵ですぞ」
「そのことを考えますと」
「我等闇に蠢くまつろわぬ者に日輪は最大の敵」
「あの御仁はまさしく空に輝く日輪ですから」
「一族にとって最大の敵ではありませぬな」
「一族か。まあよい」
松永は言いたそうだったがそれを止めた、そしてだった。
「越前に入れば面白いことになるか」
「まずは徳川殿との合流ですな」
「それになりますな」
「うむ、徳川殿は一万を率いて来られていると聞く」
三河の兵の殆どだ、三河と遠江の西に残る兵は二千程度しかいない、守りは岐阜に控える平手が率いる美濃と尾張の兵に頼っている。
国をほぼ空にしてまで来る、それは何故かというと。
「律儀な方よのう」
「天下随一の律儀者とも呼ばれていますが」
「その通りですな」
「徳川殿はそうした方じゃ」
松永も太鼓判を押す程だというのだ。
「見事なまでに律儀な方じゃ」
「例え武田が来ぬとわかっていても国を空には出来ませぬ」
「出来ても勇気がいります」
「それをあえてしてまで右大臣殿に義を見せますか」
「いや、器用ではありませぬが律儀ですな」
「それに尽きます」
「殿がおられずとも徳川殿がおられ
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