一章 四話 とある妖精の激昂
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
Hp表示はもうイエローに入っている。
絶え間ない衝撃に耐えつつ、立ち上がる。
どうにか反撃を・・・
「くっ!」
そんな暇、全く見当たらない!
前方からの斬撃をギリギリのところで受ける。と、次の瞬間には、もう背中に回り込まれて、ダメージを受けている。
右、後ろ、上、左・・・目で追うのもやっとの動き。
何で、何でだよっ、敏捷値だってレベルだって、たいした差はないはずなのに・・・・ッ
HPが赤に入った。周囲を切り裂く風の音、地面を蹴る靴の音が、スッと消え・・・
「・・・うぅ・・・・」
極限の集中状態の中で、俺は小さなうめき声を聞いた。
それが、少しずつボリュームを上げていって・・・
「うわああああああ!!」
泣いているのだと気づいた。
俺が、ではない。蒼の少女が、だ。
何でーー
俺は、ダラリと下がり、全く動かなくなった自身の両腕に驚愕する。
左腕が、飛ぶ。
視界端に部位破損の表示が点灯する。
今更ながらに逃げようと思って俺は、指一本動かなくなっていることに気づく。
視覚だけが極限までに解放された状態で、俺は一切抵抗できず、切り刻まれていく。
スローモーションのようにゆっくりと流れていく剣光と、涙が俺の目に焼き付く。
HP残り数ドット。
あと一撃で、俺は死ぬ。
その最後の一撃が、迫る。
クソ!動け????動けよ体!動かなきゃ、死ぬ・・・・!動・・・・・!
世界が、止まった。
真っ白な刃は、俺の首もとで止まっていた。
彼女の短剣が、手からこぼれた。
蒼の少女が、崩れるようにうずくまる。
「うああああああああ!!!」
洞窟を震わせる彼女の叫び意識の片隅にいれながら、俺は呆然と立ち尽くしていた。
「ああああっ!クソっ!」
俺は荒れていた。
まあ、そう客観的に見れているのだから、たいしたことはないのかもしれないが。
とりあえず、俺は五十一層主街区”アルゲード”にあるホームへ帰ってきていた。
「クソ、クソ」
言葉にしようがない苛つきを、部屋の隅にたまった新聞の束にぶつける。
広げて、ちぎる。丸めて、投げる。
「だあああああっ」
床に寝転がって、子供のようにバタバタしてみる。
「うるせえぞ!」
ボロアパートのゴツゴツしたオッサンが、薄い壁をガンガン叩いて怒鳴ってくる。
本来は、SAOの壁は音を通さないのだが、このボロアパートは例外だ。家賃がそこらのホームの二十倍は安い代わりに薄壁鍵無しが標準装備だ。
とりあえず、自暴自棄タイム終了。短けえな。
ま、あのオッサン怖えし。
この前なんか、注意を聞かなかっただけで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ