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SAO――とある奇術師は閉ざされた世界にて――
一章 四話 とある妖精の激昂
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Hp表示はもうイエローに入っている。

絶え間ない衝撃に耐えつつ、立ち上がる。

どうにか反撃を・・・

「くっ!」

そんな暇、全く見当たらない!

前方からの斬撃をギリギリのところで受ける。と、次の瞬間には、もう背中に回り込まれて、ダメージを受けている。
右、後ろ、上、左・・・目で追うのもやっとの動き。

何で、何でだよっ、敏捷値だってレベルだって、たいした差はないはずなのに・・・・ッ

HPが赤に入った。周囲を切り裂く風の音、地面を蹴る靴の音が、スッと消え・・・

「・・・うぅ・・・・」
極限の集中状態の中で、俺は小さなうめき声を聞いた。

それが、少しずつボリュームを上げていって・・・

「うわああああああ!!」
泣いているのだと気づいた。

俺が、ではない。蒼の少女が、だ。

何でーー

俺は、ダラリと下がり、全く動かなくなった自身の両腕に驚愕する。

左腕が、飛ぶ。
視界端に部位破損の表示が点灯する。

今更ながらに逃げようと思って俺は、指一本動かなくなっていることに気づく。

視覚だけが極限までに解放された状態で、俺は一切抵抗できず、切り刻まれていく。

スローモーションのようにゆっくりと流れていく剣光と、涙が俺の目に焼き付く。

HP残り数ドット。
あと一撃で、俺は死ぬ。

その最後の一撃が、迫る。

クソ!動け????動けよ体!動かなきゃ、死ぬ・・・・!動・・・・・!



世界が、止まった。



真っ白な刃は、俺の首もとで止まっていた。

彼女の短剣が、手からこぼれた。

蒼の少女が、崩れるようにうずくまる。

「うああああああああ!!!」

洞窟を震わせる彼女の叫び意識の片隅にいれながら、俺は呆然と立ち尽くしていた。







「ああああっ!クソっ!」

俺は荒れていた。

まあ、そう客観的に見れているのだから、たいしたことはないのかもしれないが。

とりあえず、俺は五十一層主街区”アルゲード”にあるホームへ帰ってきていた。

「クソ、クソ」
言葉にしようがない苛つきを、部屋の隅にたまった新聞の束にぶつける。
広げて、ちぎる。丸めて、投げる。

「だあああああっ」
床に寝転がって、子供のようにバタバタしてみる。

「うるせえぞ!」
ボロアパートのゴツゴツしたオッサンが、薄い壁をガンガン叩いて怒鳴ってくる。

本来は、SAOの壁は音を通さないのだが、このボロアパートは例外だ。家賃がそこらのホームの二十倍は安い代わりに薄壁鍵無しが標準装備だ。

とりあえず、自暴自棄タイム終了。短けえな。

ま、あのオッサン怖えし。
この前なんか、注意を聞かなかっただけで
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