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オテロ
第四幕その三
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第四幕その三

「誰だ」
「奥様」
 エミーリアの声だった。
「エミーリアか」
「大変でございます、大変でございます」
「どうしたのだ?」
「その声は旦那様ですか」
「そうだ、わしだ」
 オテロは答えた。
「それで一体どうしたのだ?」
 オテロは自分から扉に近付き開けた。するとそこからそのエミーリアが肩で息をしながら入って来たのだった。まるで恐ろしいものを見たかのように。
「大変なこととは」
「カッシオ様がですね」
「カッシオがイヤーゴに」
「違います」
 オテロのその言葉はすぐに否定された。
「カッシオ様がロデリーゴ様を殺されたのです。夜道に襲い掛かって来られたロデリーゴ様を」
「馬鹿な、あいつが生きている」
 オテロははそれを否定した。
「そんな馬鹿な。それに」
 エミーリアはここで心の中に不吉なものを感じた。慌てて部屋の中を見回すと。
「奥様は何処に」
「エミー・・・・・・リア?」
 その時だった。不意にデズデモーナの弱々しい声が聞こえてきた。
「その声は・・・・・・奥様」
「私は・・・・・・」
 ベッドの方から声がするのがわかった。血相を変えてそこを見るとそこには仰向けに弱々しく倒れ伏すデズデモーナの姿があった。エミーリアは彼女のその姿を見て血相を変えた。
「奥様!」
「私は無実の罪で死ぬわ」
「え・・・・・・そんな」
「誰の罪でもないの。だから気にしないで」
「気にしないでと言われても」
 そんなことは無理だった。デズデモーナにとっては。
「そんな・・・・・・奥様」
「さようなら」
 一言だけだった。
「今まで有り難う」
「どうして・・・・・・どうしてこんな」
「わしが殺した」
 オテロはデズデモーナに背を向けて言うのだった。
「わしがな」
「何故そんなことを」
「あの女はカッシオの情婦だった」
「そんなことは有り得ません」
「いや、確かだ」
 しかし彼はまだ言う。
「イヤーゴに聞けばわかる。御前の夫にな」
「主人が。まさか」
「しかし本当のことだ」
 オテロはこの時までもイヤーゴを信じていた。
「わしは本当に聞いたからな」
「そんなことは有り得ません」
 エミーリアは夫よりもデズデモーナを信じていた。だからそれを聞いても信じなかったのだ。首を横に振ってから言うのだった。
「貴方は愚か者です」
「わしを愚かだというのか」
「ええ。何度でも言いますよ」
 デズデモーナの遺体の前に立っていた。ベッドの上に青い顔をして目を閉じて横たわる彼女の前に。そうしてオテロを見据えていた。
「貴方は馬鹿です。この人殺し!」
「何!」
「旦那様が奥様を殺された!誰にでも言いますよ!」
「貴様!」
「何だ!?」
「今度は何事だ!?」
 そ
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