暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜優しき仮面をつけし破壊者〜
無印編 破壊者、魔法と出会う
無印〜A's 空白期
22話:男子小学生と文学少女
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俺の傘を八神が、八神の傘を俺が使っているだけの話だ。
「ごめんな、門寺君」
「ん?」
「いや、家まで送ってくれるなんて…」
顔だけこちらに向け、申し訳なさそうに言う八神。
「皆まで言うなって。さっきも言ったが、俺がやりたくてやってるだけだ」
そう、ただ俺の中に流れるお人好しの血が、八神を放っておけなかっただけだ。別に八神が気負う必要性はない。
「あ、そこ曲がるとすぐや!」
「よし、了解した」
と、そんな風に会話している間に到着したようだ。そこでふとある事が思い浮かぶ。
「そう言えば、お前夕食とかいつもどうするんだ?」
「それは勿論、私が作って食べとるよ。私一人やもん」
顔を前に向き直しながら呟く。その後ろ姿は、どこか寂しさを滲みだしていた。
「…………」
「…あ、ここやここ」
そう言われ見ると、結構豪華そうな一戸建て住宅がそこに建っていた。一人で住んでいるって言ってるが、家自体は家族向け。いや、当たり前か。子供一人で家の話云々など、できる訳がない。
「ほな、ありがとうな。ここまで送ってくれて」
「あ、あぁ…」
持っていた傘をそれぞれ交換し、八神はそのまま自宅へと帰っていく。
………くそっ!
「八神、ちょい待ち!」
「…?」
俺は八神にそう言い放ち、ズボンのポケットから携帯を取り出す。呼び止められた八神は丁度雨に当たらない場所にいるため、普通に顔だけ振り返る。
俺は取り出した携帯である番号に電話をかけ、携帯を耳に当てる。
『―――はい、こちら翠屋です』
「あ、桃子さん?今いいですか?」
『士君?どうしたの?』
「あ、桃子さん?今いいですか?」
いきなり家の前で呼び止められ、振り返ると呼び止めた本人は携帯で電話をしている。
少し疑問を抱きながら、門寺君の行動を見ていた。
門寺君は何度か頷きながら、こちらを何度かチラッと見てくる。なんやろう?なんかあるんやろうか?会話が聞こえない分、少し気になってしょうがない。
そう思っていると、携帯を耳から離しボタンを一つ押すと、携帯を仕舞いながらこちらへとやってくる。
「え…?」
そう、私の家に向かってやってくるのだ。そして雨に当たらない場所に来ると、傘をたたむ。
「どう…して…?」
「自分で作ったのを自分で食うなんて、味気ないだろ?だからさ……―――」
そう言って、肩にポンッと手を置き、
「俺が飯作ってやるよ」
と言ってきた。
ジュージューと音が響く部屋。それを聞きながらじっと待つ私。
(…門寺君、料理できたんだ……)
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