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オテロ
第三幕その八
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第三幕その八

「ここにある通りです」
「わかりました」
 カッシオが最初にオテロに対して一礼した。
「その御言葉、慎んでお受け致します」
「見たな」
 オテロはそのカッシオを一瞥した後でイヤーゴに対して囁いた。
「はい」
「恥知らずが。のぼせ上がっているようには見えないが」
「確かに」
 イヤーゴもその言葉に頷く。
「見たところは」
「ここにある全てのもの」
 オテロは告げながらまたデズデモーナを見る。彼女はすすり泣き続けている。しかしその彼女にまた冷酷な言葉を浴びせるのだった。
「そのまま泣いていろ。永遠にな」
 そう言ってからまた言うのだった。
「それへの指揮権を彼に任せます」
 これで言葉は終わる。するとすぐに彼のところにロドヴィーゴがやって来た。そのうえで彼はデズデモーナを横目に見ながらオテロに対して話すのだった。
「奥様を慰めて下さい。あまりにもお気の毒です」
「明日ですな」
 彼はそれに答えずに呟くだけだった。
「私が出るのは」
「私?いや」
 思わず言葉を訂正させようとするが間に合わなかった。また感情を爆発させてデズデモーナに対して叫ぶのだった。
「跪け。そして涙を流せ!」
「本当にどうなったのだ!」
 デズデモーナの胸倉を公衆の前で掴んで床に叩きつけるオテロを見てまた呆然となった。
「これがあの・・・・・・ヴェネツィアの獅子なのか」
「奥様・・・・・・」
 エミーリアは咄嗟にデズデモーナのところに来て彼女を助け起こす。必死に彼女を助けようとしていた。
「どうして」
 デズデモーナはエミーリアに助け起こされながら呟いていた。泣きながら。
「私は。どうしてこんな」
「何ということ」
 エミーリアはそんなデズデモーナを見て悲嘆と途方で目の前を真っ暗にさせていた。
「奥様はもう苦しみと悲しみで」
「運命は決まった」
 カッシオは二人とは正反対に満面に笑みを浮かべていた。
「地獄から天国に。運命の頂点が無力な私に預けられた」
「ヴェネツィアに去るというのか」
 ロデリーゴはデズデモーナを見て歯噛みしていた。
「黄金色の天使は私の手の届かないところに」
「何があったのだ」
 ロドヴィーゴはオテロとデズデモーナを見てまだ呆然としていた。
「あのヴェネツィアの獅子が。そしてヴェネツィアの真珠が」
「オテロ様はどうされたのだ」
「何故この様なことが」
 周りの人々も唖然としていた。その中でイヤーゴがここぞとばかりオテロに囁いてきた。
「ところで」
「何だ?」
「急がれた方がよいかと」
「急ぐのだな」
「そうです」
 こうオテロに囁くのだった。実直なふりをここでもして。
「怒りは無用な悪ふざけ。力を奮い起こして立ち上がり仕事に努力を向けて下さい」

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