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オテロ
第三幕その七
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第三幕その七

「許しだと」
「今何と」
「いや、奥様」
 事情を知らないロドヴィーゴが二人の間に入った。
「総督は文章を読まれているだけですぞ」
「そうですか」
 デズデモーナはオテロの様子に顔をさらに真っ青にさせたがそれをまずは薄くさせた。
「まあ奥様」
「イヤーゴさん」
 デズデモーナの前のイヤーゴの仮面は紳士のものだった。
「おそらくお許しが出ますので」
「そうですね。カッシオさんはいい方ですので」
「静かにしなさい」
 不吉なオテロの響きがデズデモーナの耳に入った。するとデズデモーナの顔がまた蒼白になった。その蒼白の顔がオテロの目に入ると彼の中で何かが切れた。
「黙れ!」
「えっ!?」
「黙れと言っているのだ!」
 いきなりデズデモーナに飛び掛って来たのだった。
「この悪魔が!」
「なっ、総督!」
 ロドヴィーゴは今の事態に我が目を疑った。だが咄嗟にその手を動かして二人の間に入る。
「何をされます!」
「馬鹿な、オテロ将軍が!」
「これは一体!」
 周りの者も驚きを隠せない。ロドヴィーゴはオテロの前に立って必死に止めている。
「落ち着かれよ、総督!」
「カッシオだ!」
 オテロはロドヴィーゴに止められながら周りの者に対して叫んだ。
「カッシオを呼べ!」
「総督、何を為さるので?」
「決まっている」
 問うたイヤーゴに対して言い返す。
「あいつが来た時のあれの様子を見てやる」
「左様ですか」
「しかしどうしたのだ」
 ロドヴィーゴは今のオテロを見てまだ我が目を疑っていた。それを口に出す。
「閣下は。あのヴェネツィアの獅子は」
「さて」
 イヤーゴはそれにはとぼけるだけだった。
「何が起こったのやら」
「何か知っているのか?」
「それがですね」
 普段彼に見せている実直な軍人としての仮面での言葉だった。
「何も申し上げない方が宜しいでしょう」
「一体何が」
「来たな」
 オテロは血走った目で周りを見回していた。そしてカッシオが来たところでその目を彼とデズデモーナに集中させた。そのうえでイヤーゴに対して告げた。
「あいつの心中を探ってくれ」
「わかりました」
 実直に頷くイヤーゴであった。実直なふりをして。
「諸君!」
 オテロは冷静さを何とかその身にかけながらその場にいる者達に告げてきた。
「統領は。我がヴェネツィアの元首は私を祖国に召還されます」
「まあそうだろうな」
 これは昇進である。今度は本土で要職を務めるのだ。イヤーゴはそれがわかっているからこれを聞いても特に驚くことはなかった。
「御前は嘆くふりをしていろ」
「どうしてそんな・・・・・・」
 デズデモーナは今のオテロの言葉にまたその顔を蒼白にさせる。
「その様なことを」
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