第四十七話 アメリカ軍人その五
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「そうでしょうか」
「はい、こちらの単位で二メートル程もある巨大な剣でして」
「その剣を使うのですか」
「両手で握り振ります」
それがそのトゥーハンドソードの使い方だというのだ。
「あまりにも巨大なので使い方の難しい剣ですが」
「何か凄い剣ですね」
高橋もその剣の話を聞いて言った。
「そんなのがあるんですね」
「かつて戦場での剣は大きいものでした」
実は日本でもそれは同じだ。戦国時代での日本刀は江戸時代や現在の剣よりも大きなものだったのだ。
「そして私はその剣をです」
「使われている」
「そうなんですね」
「正規のフェシングの剣ではないですが」
それでもだというのだ。
「嗜んでいます」
「ではその剣で」
「戦っています。それで」
「それで?」
「合衆国の為に責を果たせればとも思っています」
スペンサーは微笑んでこうも言った。その笑みはいかつい顔にも関わらず妙に人懐っこい親しみのあるものだった。
「アメリカ軍人として」
「そうお考えですか」
「実は私はあまりいい生まれではなくて」
自分の話もここでするのだった。
「シカゴの自動車修理工場の家に生まれました」
「自動車のですか」
「小さな工場で食べることには困りませんでしたが」
「それでもですか」
「スラム街のすぐ傍にありまして」
中になくともだというのだ。
「結構ガラの悪い連中も出入りしまして」
「工場の中にですか」
「それで喧嘩も多かったです」
そうした中で育ったというのだ。
「このままいったら父の工場を継いでいましたがジュニアハイスクールの時にたまたま観た空軍の航空ショーに感激しまして」
「それで軍人になられたのですね」
「はい、そうです」
まさにその通りだと工藤に答える。
「勉強をはじめたところ成績が上がりまして」
「士官学校にも入られたのですか」
「幸い議員の推薦も得られました」
アメリカでは士官学校に入るには連邦議員の推薦状が必要だ。それだけ信頼できるという証ということだ。
「それで士官学校に入りました」
「今に至るのですね」
「工場は弟が継ぎました」
そちらはそうなったというのだ。
「今でも荒くれ者達の中で楽しくやっているそうです」
「楽しくですか」
「私は子供の頃からそうした空気は苦手でして」
元々合わなかったというのだ。
「それで去りましたが」
「それで軍人になられて」
「残念ながらパイロットにはなれませんでしたが」
「それでもですね」
「はい、こうして元気に軍務に就いています」
こう工藤達に話す。
「軍は私に合っていますね」
「そうですか」
「空軍は紳士ですよ」
スペンサーは笑ってこんなことも話した。
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